突然ですが、みなさんは「言葉選び」が巧みな漫画は好きですか?
私は大好きです。
なんならストーリーやキャラクターの魅力よりも「セリフ、フレーズの上手さ」で漫画を選んでいます
そんな言わば「言葉フェチ」な私が、狂おしいほどに癖になる言葉たちが魅力の漫画を紹介します!
アニメ化済みの作品
日常 (作:あらゐけいいち)
- 「月刊少年エース」にて連載されていた作品(完結)
- 2011年にアニメ化
- 時定市を舞台に、女子高生や街の住人の日常を描く
- 一般的な感覚とは少しズレた日常に引き込まれる
- 『あるある』と『意味不明』が同居したようなセリフが特徴
出来事やキャラクターがまず非日常的であることはさておいても、基本的に会話の雰囲気はタイトル通り「日常」系なんですよね。
ゆっこ「いまから英語言ったら負けね」
みお「オッケ」
ゆっこ「あっ、いま みおちゃん英語言った」
日常5巻より
分かる。
なんなら経験ある。あるある。
かと思えば
ゆっこ「じゃあスタートって言う前に いっぱい英語言っとくかなー」
みお「いっぱい英語知ってるの?」
ゆっこ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
みお「オッケ」
日常5巻より
ああ、ゆっこ、愛おしいよ…。
「いっぱい英語知ってるの?」というすごくシンプルなセリフにも、「暇じゃないけど暇」な女子高生の淡々とした空気感が伝わってくる。
難しい言葉を使わずとも言葉選びのセンスって出るなぁと実感したコマでした。
そんな日常っぽい会話の中で「え、その例え出てくる!?」みたいなセリフや「なんかズレてるけど、なんか分かる!」といったセリフが絶妙なバランスを取って『意味不明』と『でもなんかクセになる』を両立させています。
…かと思えば勢いで押し切る場面も多く、つかみどころがない
ゆっこの叫び声や、みおちゃんの「ヒヤシンス!」「焼きそばだよ!!!」でその場を押し切る潔さ。
かと思えば突然出てくる「弥勒菩薩」。
「あるある日常ネタ」と「理解させる気ないだろ」みたいなシーンの配分がちょうどよく、「理解はできるけどなんか普通じゃないよね」と感じる言葉選びは、癖になったが最後、あなたの日常になってしまうでしょう。
購入はこちら:
「日常」のおすすめポイントをまとめた記事もあるので、これから観てみようかなぁという方はぜひ読んでみてください!
まちカドまぞく (作:伊藤いづも)
- 「まんがタイムきららキャラット」にて連載中
- 2019年にアニメ化し、2期の放送も決定している
- まぞくのシャミ子と、その宿敵である魔法少女桃のほのぼのファンタジー
- 元ネタを漁り始めるとキリがない
- 絶妙に日常で使えそうなセリフの言葉選びに心つかまれる
セリフに逐一作者様の博識さが垣間見えて、「少しおバカな女子高生」設定がかすんでしまう感じのやつです。
ただ、「主人公がおバカ」設定を無視すれば、人と人との会話としてはリアルだなと思います。
社会人になると別に意識高いわけでもないのに、自分の会社で使われている言葉を無意識に使ってしまうじゃないですか。
そんな感覚で、「漫画のセリフ」という観点ではけっこう稀有な言葉選びが多いのですが、社会人同士の会話だと思えばわりかしあるあるな感じのセリフでもあります。
そんなセリフを、本来『萌え』『かわいい』の対象である「おバカな女子高生」に使っているところがこれまた秀逸で、ニクいです。
ちょっとだけ痛いかな 筋肉注射くらいの痛さ
まちカドまぞく1巻より
「チクっと痛い」「パチンと痛い」とかではなく、「筋肉注射くらいの痛さ」。
分かりそうで分かりづらい少し分かりそうな例え。
こういうのが、『言葉フェチ』にはたまらないのですよ…。
セリフやタイトルの元ネタには2000年代のテレビネタも多く、その点は本サイトで元ネタ考察をした記事があるので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
Twitterでも書籍でも読める作品
デリシャス・サンド・ウィッチーズ (作:小山コータロー)
- 2020年8月に書籍化された、小山コータローさんの漫画
- 1コマ漫画に自らツッコんだり、4コマ漫画だったり、そうじゃなかったりする
- 縦横無尽に繰り広げられるセリフ1つ1つに浮遊感さえ味わえる
- 「悩ましさ」が癖になる
- 言葉選びのセンスはもはや芸術
基本的に毎回違うキャラクターが登場する数コマ漫画です。
キャラクターが固定でない分、「この人が言うから面白い」みたいなセリフが作りづらい…かと思いきや、独特の言葉選びのセンスに出逢えるので、読んでいて楽しいです。
勢いで笑わせることがほぼなく、「なんでだよぉ~」「え、どうした、分かんないよ…」というネタには浮遊感すら抱きます。
「楽しい」「浮遊感」という感想がしっくりくる漫画です
その反面、野球ネタやテレビネタなど、知識がないと分からないネタも多いです。
ただこの「知識がないと分からないネタ」というのが『言葉フェチ』な私にはたまらないんですよね…。
分かるネタなら「その話題を持ってくるか~」「このボケ、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね」などと思いながら自己陶酔できます。
逆に分からないネタでも、「知らない感覚」を味わうのって快感だったりしませんか?
…私だけ?
ほら、これだって、ビニール袋を猫と見間違えた人にしかなかなか理解できないんですよ。
または「ツイッターでこんなネタ見たことある!」という人は「あ、あのネタだ」となるでしょうけども。
そもそもビニール袋を猫に見間違えるなんてことありますか?私はあります。
ビニール袋を猫と見間違えたことがない人も「うーん、見間違えるかなぁ…いや、見間違えなくもないかな…」と悩ましくなっちゃうんですが、この悩ましさが癖になってしまう。
「分かる!」「分からない!」どっちに転んでもなんか笑えてしまう言葉選びは、もはや芸術です。
こちらのツイートの1コマは書籍化後にツイッターに投稿されたものですが、すごい好きです。
「巨匠かな?」とは思わないんですよ、普通。
でも小山さんは「故障かな?」の語感から、「巨匠かな?」が浮かんだんでしょうね。
言葉選びのセンスがもはやおしゃれの域なので、「話が面白い人になりたい!」と言う方が読むと学びが多いのではないでしょうか。
彼の世界観はだいたいこんな感じ。
このネタが好きならもう絶対フォローした方がQOLあがりますし、本も買った方がいいです。
私は本が気に入りすぎて、購入して4か月経った今もなかなか本棚にしまえずにいます…。
一線こせないカテキョと生徒 (作:地球のお魚ぽんちゃん)
地球のお魚ぽんちゃんさん(以下ぽんちゃんさん)がTwitterでアップしていた作品が、ついに書籍化されました!
Kindle unlimitedでも読めるのに、なんだか紙でも欲しくなって買っちゃいました…。
それくらい愛おしさが溢れる漫画。
- 東大生の家庭教師(カテキョ)ほのか先生と、おバカな男子高校生高木の、ほのぼの日常系ラブコメディ
- 「愛おしい」と「びっくり」が同居した新感覚の「おバカキャラ」たち
ほのか先生と高木の他にも高木の同級生などが出てくるのですが、登場人物全員、独特な感性を持っています。
おそらくジャンルとしては「ラブコメ」なんですが、そもそも「コメディ」でくくっていいレベルのボケじゃないんですよね。
「おバカ」を表現するためのボケは作者様の個性が出るのですが、そのなかでもぽんちゃんさんのセリフ選びは秀逸で絶妙。
「おバカキャラ」って、場合によっては同族嫌悪的にイライラしてしまうこともあるのですが、ぽんちゃんさんの描く「おバカ」はなんだかイライラしないんですよね。
むしろ愛おしい。
「意味不明」で片付けるほど難解でもなく、かといって「おバカあるある」で片付けるにしてはセリフから受ける印象が新鮮すぎる。
セリフが新鮮だからこそ、どんなバカもどんなインテリもイライラさせない、愛おしき「おバカキャラ」を作り出しているのではないでしょうか…。
私はぽんちゃんさんをいろんなアカウントで数年間フォローしているのですが、未だに出てくる言葉1つ1つに驚きます。
作者様に対し
「なんでそんなボケがでてくるの?地球外生命体の日本語話者なの?」
という疑問さえ抱いてしまいますが、「地球のお魚」と書いていることから一応地球の生命体ではあるようです。
「1+1が分からない」という定番で分かりやすいボケをかましてくる一方で、「もはや常人の思考回路ではない」としか言えないネタまで出てきて、1コマ1コマ”びっくり”します。
もちろん面白いんです!
面白いんですが、「面白い」より「びっくりした!」の方が近い感覚なんですよね…。
「そうはならんやろ!…いや、確かにそうなるかもしれない」
と無理やり納得させられるような感覚に陥ったらもう、あなたはぽんちゃんさんのトリコです。