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「まちカドまぞく(1巻)」セリフの背景や元ネタをメタ的に考察【作者様博識すぎ】

2019年にアニメ化し、アニメ2期も発表された「まちカドまぞく」。

作品中のセリフは独特なものが多く、見慣れない言葉も散見される。

この記事ではそんな難しい言葉の解説と共に、時代背景的な意味合いを含んだもの、さらに人生を豊かに(?)するような考え方など、「小ネタ」的な要素も紹介する。

※解説はサイト主(イツカ)独自のものなので、原作者の意図と必ずしも合致するものではないことをご了承ください。

※「そんなの解説するまでもないだろ!」という項目もあるかもしれません。でも、それはあなたの履修済みコンテンツが私と似通っていると解釈でき、むしろ仲良くなれると思います。

朝フル(1巻 P.5)

桃いわく、「朝からフルマラソン」のこと。

シャミ子は「朝食をフルーツにする」ことだと予想し否定されたが、実はこちらが一般的。

「朝のフルーツは金メダル」という言葉もあり、朝食にフルーツを食べることは健康やダイエット効果があると言われ続けているが諸説ある。

まさにまぞく1巻の単行本が出た2015年ごろ、「朝フル」という言葉が流行した。

朝スムージー、朝フルグラが流行ったのもこの時期。

さらに時はさかのぼること、まだまだテレビが世間の話題の中心だった2000年代前半。

「朝バナナダイエット」なるものがしばしばテレビで紹介され、その次の日にはスーパーのバナナが売り切れるという現象がたびたび起こっていた。

まだまだテレビの情報を鵜呑みにする層が多かった時代である。

「朝フルーツ」の流行は繰り返されているのだ。

家族四人で月四万円生活(1巻 P.11)

このフレーズを聞いて思い浮かべたのは「一か月一万円節約生活」

そう、テレ朝の「いきなり!黄金伝説。」という番組の人気企画

「いきなり!黄金伝説。」は、よゐこ浜口の「獲ったどー!」が流行したあれだ。

この番組は1998年から2016年まで放送されていたもので、「獲ったどー」が流行ったのが2000年代前半。

まちカドまぞく1巻のP.25で「まぞくちねりじゃー」というセリフも出てくるが、黄金伝説で「ちねり」という節約料理が登場する。

作者の年齢は不詳だが、まちカドまぞくの連載スタートを若く見積もって20歳だと考えても、テレビの話題が中心になりやすい学生時代に観ていたとも考えられる。

このことを加味しても、「家族四人で月四万円生活」というフレーズの元ネタはここからきていると思われる。

没になったキラキラ活動名(1巻 P.13)

シャミ子は、活動名である「シャドウミストレス優子」の略称である。

そもそも「キラキラ活動名」というフレーズだが、2000年代後半あたりに話題になった「キラキラネーム」という言葉をもじったものと思われる。

キラキラネームとされる名前は、主に「一般的な読み方をしない当て字」、「和名として馴染みのない英語」(例:月と書いてライトと読む)で、「読みづらい」「つけられた子供がバカにされる」「大人になったとき恥ずかしい」とされ、改名のニュースも話題になるなど、一時社会問題となっていた。

その活動名にも没になったものが3種ある。

仮面X(かめっくす)

カメックスは初代ポケモンの御三家(最初にもらえる3匹のポケモン)のうちの1匹である「ゼニガメ」の最終進化系。

仮面Xはおそらく、カメックスと「仮面ライダーX」をもじったもの。

闇照澪子(やんでれこ)

まちカドまぞくには神話が元ネタのものが多く存在することから、「天照大神」にかけての「闇照」だと思われる。

ちなみに「ヤンデレ」は2010年前半に流行った言葉で、ツンデレの派生形。

ツンデレが「普段はツンツンしているが、自分にだけたまにデレる」という萌えに対し、ヤンデレは「特定の人物を好きすぎて精神を病んでしまった結果、多くの場合、相手やその周囲に法に触れるほどの危害を加えてしまう」という萌えである。

十五夜(ゆたか)

元ネタは「盗んだバイクで走り出す~」でおなじみの、尾崎豊の楽曲『十五の夜』からきていると見て間違いないだろう。

そもそもなぜ「十五の夜」なのかと言えば、シャミ子が15歳であること、優子と十五で韻が踏めること、『闇』の連想で『夜』、などが考えられる。

えぶ?(1巻 P.26)

魔法少女のちぎなげにおびえるシャミ子の鳴き声。

単なる小話だが、フランス語で「えぶ?(et vous)」は「And you?」や「How about you?」といった意味。

万物は流転する/ゆく川の流れは~(1巻 P.32, 33)

シャミ子がランナーズハイを経験している最中、脳から漏れ出るように発したフレーズ。

ヘラクレイトスの「万物は流転する」と、鴨長明『方丈記』の「ゆく川の流れは~」は、両者に方向性の違いはあれど、どちらもこの世が変化し続けることを表現したものである。

「川」は同じ場所にあるが、目の前の川を流れる水は1秒前と1秒後で変化している。

おそらく川沿いを走っていたために、「流れる川」の連想からこのフレーズが浮かんだものと思われる。

夢だけど夢だった!!?(1巻 P.49)

「夢を夢と自覚して事故をコントロールした上でご先祖と会話をしている、いわゆる明晰夢だと思っていたが、思い返すと内容がシュール過ぎて通常の夢だったのではないか」という混乱を表現している。

元ネタは映画「となりのトトロ」の「夢だけど夢じゃなかった」という有名なセリフで、「夢の中で不思議な力で木を大きくしたら、現実でも木が成長していた」ことを表現している。

筋肉注射くらいの痛さ(1巻 P.58)

「筋肉注射くらいの痛さ」と言われて痛みが想像できる男性は少ないと思う。

というのも、筋肉注射をする機会のメインは幼少期のワクチン接種。

そして2010年に10代前半女性の子宮頸がんワクチン無料接種がスタートした。

どの後重大な問題点が露呈し、定期予防は即座に中止となったが、2010年代初頭あたりに10代だった女性は子宮頸がんワクチンで筋肉注射を経験している

そのため、2020年現在、20~30代の女性以外は筋肉注射の痛みが想像できる人は多くないのでは?という小ネタ。

時給750円 3時間の闇バイト(1巻 P.70)

シャミ子が魔法少女に借金を返すべく、最低限の資金繰りために友人から紹介されたバイトをした回。

2020年現在、作品の舞台となった多摩市(東京都)の最低賃金は1013円。

単行本1巻が発売された2015年は888円。(同年10月に907円へ値上げ)

地方出身の私の感覚では時給750円はスルーしてしまいそうなところだったが、当時でも東京都で時給750円は最低賃金を下回っていた。

世間知らずなまぞくを低賃金で雇う、名実ともに「闇」バイトだったのだ。

ただ稼ぎすぎると「運命レベルでお金が逃げていく」のろいがあるうえで、借金2170円(電車賃のコリ430円、健康ランド1720円)を返済するギリギリに抑えたかったことを考えると、時給750円×3時間=2250円は妥当なのかもしれない。

まぞく、手段が目的になる(1巻 P.72)

シャミ子が「魔法少女を倒して自分はどうしたいのか」と悩むシーンのタイトル。

このタイトル、最初はスルーしてしまったが、よく考えるとなかなか深いシーンとなっている。

本来は

手段バイトをする

借金返済のための資金を稼ぐ

魔法少女に借金を返す

魔法少女に正々堂々と勝負を挑む

目的魔法少女に勝利し、一か月四万円生活などの封印を解く

つまり、「封印を解く」ために「バイト」をしていたはずだ。

だが、このシーンではタイトル通り「手段が目的に」なってしまっている。

つまりはシャミ子の脳では「バイト」をするために「封印を解く」という思考になっている。

手段:魔法少女に勝利する

一か月四万円生活などの封印を解く

がっかり微調整を気にせず稼ぐことが出来る

目的たくさんバイトをする(=ウインナーをもらう

これがタイトルの「手段が目的になる」ということである。

とはいえ、よく考えると当初の潜在的な「目的」は変わっていない。

封印を解くことで家計をラクにすることを目的にしていたはずだから、目的が「バイトをたくさんしてウインナーをたくさんもらう」ことが目的になっていても、本質的な目的をシャミ子は見失っていなかったのだ。

ギャグシーンではあるが、シャミ子が「家族をラクにすること」を潜在的に望んでいることが分かる。

ゲキヤスヨーグルト(1巻 P.76)

チチヤス株式会社の「チチヤスヨーグルト」をもじったものと思われる。

作品中の「ゲキヤスヨーグルト」にはクマのマークがついているが、実際の「チチヤスヨーグルト」には「チー坊」というシンプルな絵柄の男の子が描かれている。

ちなみにタイトルに「再度登場ゲキヤスヨーグルト」と書いてあり、探してみると1巻のP.61に邪神像のお供え物として置かれていた。

ちなみに、さきほどの「手段が目的になる」くだりで「ウインナーをもらう」ことがシャミ子のバイトの目的となってしまっていた。

そのため、桃が売り上げに貢献(貢献なんてレベルじゃない)したことを差し置いて、「桃のせいで目的(ウインナーをもらう)が達成できなかった」ことにシャミ子はご立腹だ。

反鼻・蛤介・冬虫夏草(1巻 P.90)

小倉さんがシャミ子に食わせるために作成した「魔力がゴリゴリにあがりそうなオリジナル漢方」の主な原材料。

「生薬系はいっぱい入れた」とのことだが、列挙されたこれらはなんと、全て虫由来のもの。

かわいいまぞくに食わせていいものではない…。

ちなみに、作中にはポケモン由来の要素がちょくちょく挟まっているのでちなむと、「冬虫夏草」はポケモン世界にもあるようだ。

初代のポケモン図鑑に載っている「パラス」というポケモンの説明で登場する。

虫が苦手な人なら間違いなく不快感を伴う見た目をしているので、ググる際は要注意。

突撃!隣の夢(1巻 P.95)

言わずもがなかの有名なヨネスケの「突撃!隣の晩ごはん」のパロディだが、放送は2011年で終了している。

今の10代は分かるのだろうか…。

「夢見鏡」も、同番組で登場するお馴染みのしゃもじに酷似している。

ただ、P.97でリリスが「何故それがしゃもじに見える?」と言っていることから、ご先祖的にはパロったつもりはないらしい。

あくまでシャミ子の魔力を借りて具現化したものだということから、シャミ子の意識には「突撃!隣の晩ごはん」が印象強く残っているのだと思われる。

「ドンドンパフパフ」という効果音も昭和~平成初期のテレビを知らない若人にはあまりピンとこないのではなかろうか…?

サラサラがぼさぼさです(1巻 P.101)

体調不良の桃を見てシャミ子が放った吹き出し外のセリフ。

栄養不足とか血行不良とか要因は多々あれど、体調が悪い時に同時に髪質も悪くなる(ボサボサやべたべたなど)というのは的を得た指摘である。

ただ、明らかに栄養不足である桃の髪が普段「サラサラ」と言えるものだったかは疑問だ。

ハートフルピーチモーフィングステッキ(1巻 P.104)

桃の家の引き出しから見つかった、「ただの棒」。

元ネタは「リボン」「ハート」という見た目から推測するにクリーミーマミの魔法のステッキ

ただタイトルに「いろんな職業に変身できる」とあることから、ひみつのアッコちゃんの秘密のコンパクトの要素も含まれていると考えられる。

さらに補足すると、魔法のステッキに名前がつくようになったのは平成初期ごろの、美少女戦士セーラームーン、魔法使いサリー(第二弾)あたり。

魔法少女系のステッキやライダー系の変身ベルトなど、アニメキャラの使用するグッズの商品化が増えた時期である。

魔法のステッキは、元女児の私としてはテンションの上がるネタだ。

重いコンダラ(1巻 P.118)

グラウンド整備に使用される、シャミ子いわく「ゴロゴロしたもの」。

巨人の星のトレーニングに使用されるイメージと、同アニメのテーマソングの「思い込んだら」というフレーズを「重いコンダラ」だと勘違いする人が続出したイメージがガッチャンコして、『トレーニングに使われるっぽいゴロゴロしたもの』を『コンダラ(コンダーラー)』と呼ぶようになった。

ちなみに同じコマに登場する「鉄のバット」も巨人の星関連。

以上、まちカドまぞく1巻のメタ的な考察をしてみた。

テレビネタが多く、(おそらく)作者様と同世代の私は「おっ」と思う場面が多かった。

2巻の考察もしているので、ぜひ読んでみてほしい。

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