Superflyの大人気曲『愛をこめて花束を』。
幸せハッピー!…な曲かと思えば、実は歌詞をじっくり読むと意外な真実が見えてきました。
今回は意味深なフレーズを考察しながら、「わたし」の心情を紐解いていきます。
二人の関係
まずこの歌の登場人物は、「わたし」と「あなた」です。
二人で写真を撮ろう 懐かしいこの景色と
あの日と同じポーズでおどけてみせて欲しい
作詞:越智志帆・多保孝一・いしわたり淳治
冒頭のこのフレーズから、懐かしいと思える思い出があるくらいには長い関係であることが分かります。
「あなた」はおどけてポーズを取るようなキャラだったんですね。
この込み上がる気持ちが愛じゃないなら
何が愛かわからないほど
作詞:越智志帆・多保孝一・いしわたり淳治
確実に「恋人」と言える証拠はありませんが、少なくとも、愛し合っている関係のようです。
で、そんな愛をこめた花束を、わたしからあなたに送るというのがこの歌詞の大枠。
そんな二人ですが、よく歌詞を読んでみると「わたし」の気持ちは「あなた」への愛に溢れているわけではないようなんです。
本命は別にいる?
見上げる空の青さを気まぐれに雲は流れ
キレイなものは遠くにあるからキレイなの
作詞:越智志帆・多保孝一・いしわたり淳治
一番の何気ないこのフレーズ。
遠くにある「キレイなもの」とはなんでしょうか。
叶わなかった夢?
莫大な資産?
諦めたキャリア?
確かにそれらを捨てて「あなた」との結婚を選んだ、というストーリーにも読み取れます。
しかし、このフレーズも見過ごすことができません。
巡り巡る時を超え いつもあなたの所へと
この心 舞い戻ってゆく
作詞:越智志帆・多保孝一・いしわたり淳治
「いつも」ということは、頻繁に「あなた」から心が離れてしまっていたことが分かります。
夢を諦めたりキャリアを捨てたくらいで、「結局”いつも”あなたのもとに戻る」というような表現をするでしょうか?
この「わたし」ですが、実は他に本命がいるのではないかと思うんです。
その本命は「わたし」の理想のタイプ。
対して「あなた」はいわゆる”都合の良い人”だったんだろうな…と感じました。
「わたし」は陽キャで「あなた」は陰キャ?
またこのようなフレーズもあります。
何度も間違った道 選び続けて
正しくここに戻って来たの
作詞:越智志帆・多保孝一・いしわたり淳治
「間違い」というのはおそらく
「変な男にひっかかった!」
「ホストに貢がされた!」
「浮気してしまった!」
「私が浮気相手だった!」
…といったところではないでしょうか。
それで、
やっぱりあなたが一番!
といって戻ってきたと。
嫌な言い方をすれば、クズ男に引っかかりやすい女性なのかもしれません。
無理に描く理想より 笑い合える今日の方が
ずっと幸せね
作詞:越智志帆・多保孝一・いしわたり淳治
理想というのは、本命との理想の日々でしょう。
しかし本命はおそらく「わたし」を大事にはしてくれない、やっぱりクズみのある人なのだと考察しました。
そんな日々では、笑って過ごすことはできませんよね。
「あなた」は理想の相手ではないけど、と笑い合える日々の方が幸せなのだと、長い付き合いの中で気付いたようです。
…この感じ、なんか覚えがある…。
…「学生時代は悪いヤツほどモテる」からの、「社会人では堅実な人がモテる」という通説と合致…!
この曲が人気なのも、”この感じ”に共感できる人が多いからなのかもしれません。
もしかしたら「わたし」はいわゆる陽キャで、「あなた」はそんな陽キャに憧れる、いわゆる陰キャだったのかも…?
「わたし」が臆病でなかったら?
このフレーズも気になりますよね。
昨日とよく似た今日は何気ない分かれ道を
作詞:越智志帆・多保孝一・いしわたり淳治
分かって選びそびれた臆病のせいでしょう
ここは情報が少なすぎるので先述のフレーズからの考察になります。
「わたし」が臆病ではなく、分かれ道を選びそびれていなかったら…。
おそらく、本命のクズ男に気持ちを伝えていたのでしょう。
でもそれはできなかった。
なぜなら、拒絶されて傷つくのが怖いから。
私は泣くのが得意で
最初から慰めを当てにしてたわ
作詞:越智志帆・多保孝一・いしわたり淳治
臆病で選べない理想とのギャップに涙すれば、「あなた」は慰めてくれる。
二人はそんな関係だったのではないでしょうか。
なんと都合のいい…と思いつつ、ちょっと図星に感じる人も実は多いのでは…?
花束を贈った理由は?
愛をこめて花束を 大袈裟だけど受け取って
理由なんて訊かないでよね
作詞:越智志帆・多保孝一・いしわたり淳治
この曲の核になる部分です。
肝は「大袈裟」と「理由は聞かないで」。
単に照れでは?
とも捉えられますが、私は真逆だと思います。
今まで「あなた」にきちんと向き合えていなかったけど、今は真面目にあなたと向き合いたい。
今までの「わたし」とは違うというのを表現するのが、大袈裟な花束を送るという行為なのでしょう。
今だけすべて忘れて 笑わないで受けとめて
本当のわたしを
作詞:越智志帆・多保孝一・いしわたり淳治
最後に出てくる「本当」の「わたし」とはどういうことでしょう。
先ほど、今までは理想を追い求めて、笑い合えないような恋愛をしていたのだと考察しました。
でもそれは必死に背伸びをしていたときの「わたし」。
「あなた」に向き合って、幸せに笑い合うのが「本当のわたし」ということなのでしょう。
まぁでも本命は他にいるんだろ?
とツッコみたくもなりますが、「キレイなもの」は今や「見上げた」「遠く」にいるので。。
英語の部分の意味は?
violet, indigo, black and blue
flame, yellow, purple, sky blue,
pink, yellow green, ash, brown……
あなたに贈る色は……?
作詞:越智志帆・多保孝一・いしわたり淳治
曲調が変わり、英語で色の名前が列挙されます。
これは、遠くにある理想の「キレイなもの」とは別で、「あなた」だけの色を選びたいという「わたし」の心情の変化の表れではないでしょうか。
歌詞全体を通して「勝手な人だなぁ」という印象を受けましたが、実はちょっと身に覚えがある部分がある方も多いのではないでしょうか。
優しい歌声とゆったりとしたメロディに載せて、人間の恋愛のリアルな心情が表現されている、素敵な歌詞でした。