私は恋愛について「今と未来をつなぐ行為」だと思っています。
その感覚がまさにこの「桜の時」という曲に表されていて大好きな歌詞です。
では歌詞を冒頭から考察していきます。
1番
Aメロ
今まであたしがしてきたこと間違いじゃないとは言い切れない
ケドあなたと逢えたことで全て報われた気がするよ
作詞:AIKO
のっけから、良い。共感の嵐。
「あたし」がしてきた間違いというのは例えば、
イラついて誰かに当たってしまいがちだったとか、
恋人ではない異性と寝てしまったとか、
恋人がいる異性に手を出してしまったとか。
とかとか。
そういうことを想像しました。
それでもあなたに出会ってあなたを好きになって、そんな良くない行為も、「チャラになった」とは言わないけど、自分なりに乗り越えて大人になれた。
つまり、あなたと出会えたことは、「あたし」にいい作用をもたらしたんですね。
降ってくる雨が迷惑でしかめっ面したあたしに
雨上がりの虹を教えてくれた ありがとう
作詞:AIKO
降ってくる雨=自分ではどうしようもないようなこと。
そんなことにしかめっ面=腹を立てたり思い悩んだりしていた「あたし」。
感情的な方なのでしょう。
そして、もしかしたらすぐ感情的になってしまう自分があまり好きではなかったのかもしれません。
でも好きな人は雨上がりの虹=その後にあるいいこと、素敵な未来、希望を教えてくれた。
前向きな考え方は、自分だけじゃなかなか身に付くものではないですからね。
そんなあなたを、「あたし」は尊敬して感謝している、という状況が見えます。
素敵な関係!
Bメロ
「春が来るとこの川辺は
作詞:AIKO
桜がめいっぱい咲き乱れるんだ」
あなたは言う あたしはうなずく
どうでもいいのですが、ここは私は目黒川を思い浮かべました。
「雨上がりの虹」に引き続き、また「あなた」は素敵な未来を教えてくれたんですね。
春が来ると、ということはまだ秋や冬。
この曲では、桜は未来を表しているようです。
そして「あたし」は素直に頷いています。
つまり、「あなた」との素敵な未来を「あたし」は肯定的に受け止めているんですね。
素敵な恋愛ダァ…。
サビ
右手をつないで 優しくつないでまっすぐ前を見て
作詞:AIKO
どんな困難だってたいした事ナイって言えるように
サビはもう女の子全開です。
こんな歌詞を聴いたらみんな 女の子になっちゃいますね。(?)
まっすぐ前を見ている、つまりあなたとの未来を信じて歩く幸せな女の子が浮かびます。
「あたし」は、先ほどの「間違いかもしれない」過去を乗り越え、「あなた」がいればどんな困難もたいした事ないって言えてします。
確かに、私にも過去にあまり人に言えないような恥ずかしいこともしてしまいましたが、自分を愛してくれる人がいれば、そんなことも「まあいっか、今は今だし、幸せだし」なんて思えちゃいます。
また違うキス、というのは結婚式での誓いのキスでしょうかね。
これも、「あなた」との未来の幸せを表現しています。
2番
Aメロ
まぶたの上にきれいな青 薄い唇に紅をひく
色づいたあたしを無意味な物にしないで
作詞:AIKO
「色づいたあたし」ということは、きっと「あなた」と出会ってから化粧を覚えたのでしょう。
「あなた」に女の子らしく思ってもらうために、化粧すらそんなにしてこなかったであろう「あたし」は変わったのです。
さっきのサビがめちゃめちゃ女の子だっただけに、ちょっと親近感湧きますね
青いアイシャドウに、赤い口紅。
化粧に慣れていない女の子の化粧の表現なのか、平成初期の化粧の特徴だったのか、けっこう濃いですけどね…。
私の中のaikoあるあるなんですが、
後半不穏。
三寒四温と語呂が似てる…。
「二人」とかもう辛すぎるし、「初恋」も最後の最後ちょっと切ないですよね。
2番のAメロの終わりでも「無意味なものにしないで」と、二人の関係に少し不安を抱いているような言葉が出てきます。
背景は書かれていませんが、「せっかくあなたのために女の子らしくなったのに、私から離れていかないでね」という不安を抱いているのでしょう。
もしかしたら1番の「間違いじゃないとは言い切れない」過去のことが、「あたし」の不安材料になっているのかもしれません。
Bメロ
憧れだったその背中 今は肩を並べて歩いている
作詞:AIKO
もう少しだけ信じる力下さい
またちょっと不穏。
いつも後ろから「あなた」を見ていただけだった「あたし」は過去のことですね。
そして今、並んで歩いている。
信じたいのは「あなた」との未来でしょう。
先ほどの「無意味なものにしないで」というのも、
「あなたに好きになってほしいから女の子らしくしているのに、別れてしまったらその努力も無駄になってしまうじゃない!」
…と解釈しましたが、
結局のところは「ずっと一緒に居て」を遠回しに言っているのでしょう。
あんまり素直な女の子じゃなさそうですね。
そんなところも、複雑な女の子の恋心を巧みに表現していると言えます。
サビ
気まぐれにじらした薬指も慣れたその手も
作詞:AIKO
また結婚を思わせる言葉が出てきました。
「薬指」は、結婚指輪をはめる指ですね。
この曲の中で結婚は桜という言葉同様、「あなた」との未来が表されています。
そして「あたし」は女の子らしく「あなた」との結婚を夢見ているんですね。
でも、「気まぐれにじら」されている。
ということは、「あたし」は結婚適齢期。
私もそろそろそんな年齢なのですが、「彼が結婚をはぐらかしてくる!」「彼が結婚してくれない!」という話もよく耳にします。
結婚したい「あたし」に対し、結婚の話を先延ばしにして「じらし」ているのが、さっきから仄めかされている不穏な心情につながっています。
慣れた手というのもきっと、「あたし」を不安にさせているのでしょう。
余裕のある男性は確かに魅力的ですが、女慣れしてそうでモテそうなところはちょっと不安になりますよね。
ラスト
春が終わり夏が訪れ 桜の花びらが朽ち果てても
作詞:AIKO
今日とかわらずあたしを愛して
今、「あたし」は愛されている。
そして現時点で未来である桜が過去になっても今と同じように愛していてほしい。
今の恋人との未来を見据える女の子はみんな同じことを願っているはずです。
「カブトムシ」の2番ではAメロ全体を使って四季を表現し、過去の時の流れを描いていました。
この曲ではその四季が未来のこととして表されています。
四季を使っての時間の流れの表現が私は大好きです。
1番での「桜が咲き乱れる」という表現に対し、ここでは「朽ち果てる」という表現が出てきます。
時の流れとともに「あたし」が若さを失っても愛してくれるかなという不安もすごくわかります。
まぁaikoさん自身、40過ぎた今も可愛過ぎますけどね。
幸せな恋愛ソングが軸ではありますが、その中にも過去や未来が原因となる不安が複雑に入り混じっているところが、恋する女の子の心情を巧みに表現していますね。
また、「あたし」があまり女の子らしい素直な子ではない、というのが、むしろ女の子の共感を呼ぶ気がします。
世間の女の子像なんてもはや幻想ですからね。
よくない過去、幸せな今、不安な未来。
これらを繋いだものが「恋愛」だという私の恋愛観がすごくリンクして思わず感想を書いてしまいました。
追記:この記事を書いた後に『青空』という楽曲がリリースされたんですが、それが『桜の時』の続きでは…?と私の中で話題になったので、ぜひ『青空』の考察も読んでみてください!