SNSの普及で、誰もが意見し、またその意見を誰もが見ることが出来てしまう時代。10年前だったら一部の人が井戸端会議でぐちぐち言う程度の内容でも、今はなんだかんだと”炎上”してますよね。
歌詞でいえば、最近流行している「うっせえわ」の歌詞が「過激だ」とか「子供に歌わせたくない」とか言われているようです。
でも、果たして「うっせっわ」はそんなに”炎上”するような歌詞でしょうか。
”炎上”がなかった時代の歌詞の方が、私は割と「それ言って大丈夫?」と思ってしまうことが多いです。
※現代でもたまたまポリコレ警察に見つからなかっただけで、もっと過激な歌詞は世の中にたくさんあります。が、今回は割愛。
というわけで、今回は「令和で流行していたら”炎上”していたであろう歌詞」を紹介します!
※あくまで「今だったら炎上するだろうな…」という観点であり、歌詞を非難する内容ではありません。どれも時代や人の心がよく表現された素晴らしい歌詞です。
(炎上防止のため、念のため。。)
尾崎豊「卒業」「15の夜」
「うっせえわ」と並べて語られることの多い尾崎豊の歌詞。若者たちのカリスマ的存在だった彼の歌詞はどんなものだったのでしょうか。
夜の校舎 窓ガラス壊してまわった
尾崎豊「卒業」 作詞:尾崎豊
器物損壊罪です。
盗んだバイクで走り出す
尾崎豊「15の夜」 作詞:尾崎豊
窃盗罪です。あと「15歳の歌」なので無免許運転または免許偽装です。
校舎の裏 煙草をふかして
尾崎豊「15の夜」 作詞:尾崎豊
未成年者喫煙禁止法違反です。迷惑なことに、本人ではなく親や販売者に罰則が科せられます。
「教育に悪い」なんてもんじゃないですね。
”ワル”がかっこいいとされていた時代。
ロックバンド好きとしては「タバコ!酒!女!」みたいなアーティストはかっこいいと思っちゃいます。
が、さすがに「器物損壊罪」と「窃盗罪」って、教育に悪いうんぬんってより…
…え、普通にダサくない?
これも現代人の考え方なんですかねぇ。
もちろん歌詞がダサいとは思いませんよ。
当時の若者の攻撃的な精神状態がよく表されているんだろうなぁと思います。
「キレる若者」なんて言葉も聞きますし。
でもこういった犯罪によって誰かが迷惑を被ったり、下手したら取り返しのつかないことになりかねません。
単なる「歌詞の物語」に留まればいいのですが、実際にこういった不良に迷惑をかけられている立場だったら、こんな歌詞が持ち上げられる世の中じゃ…POISONです。
誰もが簡単にアーティスト本人に意見できる時代だったら、間違いなくマスコミやネット民の食い物にされていただろうなぁ。
森高千里「私がオバさんになっても」
令和脳の私からすると、もうタイトルからしてよく燃えそうな…と冷や冷やしちゃいます。
”炎上”なのに。
”サイパン”に”ディスコ”に”オープンカー”に、「現代人がバブルを懐かしんで書いたのか?」と思えるようなバブル感強めの歌詞。
とはいえ主題としては、「年を取っても、若さがなくなっても、私を愛してくれるの?」という現代にも通ずるような悩める女心を描いていています。
が。
私が”燃料み”を感じたのがこの部分。
女ざかりは19だと あなたがいったのよ
森高千里「私がオバさんになっても」 作詞:森高千里
現代だったら「ジェンダー観」「男尊女卑」「若さ優位」「ロリコン」うんぬんに対する批判が来るでしょう。
この1行で、愛する人に「女は19歳過ぎたら劣化していく」という旨を伝えられて多少なりとも落ち込んだ「私」が想像できます。
落ち込んでる描写はありませんが、そうでなきゃいちいち覚えていないだろうし、「私がオバさんになっても本当に変わらない?」なんて心配はしませんよ。
まあこういう「相手に言われて傷ついて忘れられない言葉」は誰にでもあると思うんです。
たまたまこの歌詞が令和の価値観にそぐわなくなってしまったというだけで。
でも、もうちょっと言いたいことがある。
…さすがに年齢設定若くない?
「女ざかりは25」とかならまだ分かります。当時の女性だったら多くが結婚し始める時期で、「ディスコ通いも終わり!遊びもおしまい!落ち着きます!」という年齢だとも捉えられます。
いや、19歳って…。
未成年…。酒も社会も酸いも甘いも知らない年齢ですよ…。
高卒ならまだしも、多くはまだ学生ですよ…。
これは当然、古き悪しき考えの抜けない昭和のおっさんが書いた歌詞…と思いきや、若くてきれいな森高千里が書いた歌詞。
令和ならもう大炎上でしょうね。
とはいえ、森高千里さんに悪意があったかといえば、そうでもなさそう。
だって、発表当時彼女はすでに23歳だったんですよ。
そう考えると、これは「若くてきれいなアイドルの悪意」ではなく、
「オンナを消費対象としてしか見ない”オジさん”へのカウンター」
だったのかもしれません。
アイドルという仕事柄、余計にそういった「消費対象」のような目に晒されてきたのでしょう。
だから最後に可愛らしいどんでん返しを持ってきたのかもしれませんね。
こんな歌詞を書いた森高千里さんですが、令和になってもまだまだ「オバさん」なんて呼べない美しさです。
平松愛理「部屋とYシャツと私」
すごくいい歌で、結婚を意識する年齢になるとなおさら「こんな奥さんになりたいな…」と思えるチャーミングな歌詞です。
ただ、20年経ったことでちょっと時代にそぐわない部分があると感じました。
もちろんいい歌詞なんですけど、昨今の炎上に次ぐ炎上に敏感になっている私からすると
「これは”燃え”ですわ」
と思ってしまう部分がちょいちょいありました。
愛するあなたのため きれいでいさせて
平松愛理「部屋とYシャツと私」 作詞:平松愛理
愛する人のために綺麗でいたいという感情は、まぁ普通のことだと思います。
もちろんこの時点で「男のためにおしゃれしているわけじゃない!」と思う方もいるかもしれませんが…。
しかしですよ。全体的にこの歌詞、「あなた」が浮気するであろうことが前提にストーリーが展開されています。
不倫はよくある炎上ネタです。
新婚ほやほやの歌詞が「あなた」の不倫前提だと、まるで「不倫されて当たり前」というふうに捉えられかねません。
この歌詞ではコミカルな表現をしていますが、昨今の揚げ足取りを見ていると、見逃してくれないだろうなぁ~と思っちゃいました。
あと、「現代」という観点でいうと、スープに混ぜてバレないような毒はなかなか一般人の手には入りません。
「毒入りスープで一緒にいこう♪」とお考えの方、詳しくはこの本を読むとその難しさがよく分かりますよ♪
松田聖子「未来の花嫁」
結婚適齢期と呼ばれる年齢。周りが結婚し出して、
「私たちはいつ結婚するの?ねぇ、本当に結婚するの?」
と焦る女の子の姿を描いた歌詞ですが、これは現代も変わらない気がします。
ただ、ポリコレやらジェンダーうんぬんは置いといて、ちょっと気になる部分が。
あの娘はグループで一番地味でおくれてたのに
誰よりも最初に愛を射とめたのよ
松田聖子「未来の花嫁 作詞:松本隆
さすがの松本隆先生!
女心をよく分かってらっしゃる!
けども!
ちょっとぶっちゃけすぎでは?
令和になった今でも「アイドルと言えば聖子ちゃん!」と言う人も多く、当時はみんなが髪形を真似したという伝説のアイドル松田聖子様。
そんな影響力のあるお方に歌わせるにしては、ちょっとパンチ効きすぎじゃないかなーと個人的にビビってしまいました。
可愛くて歌唱力もあり、いわば「勝ち組」な売れっ子アイドルに「地味で遅れてるあの娘」なんて歌われてしまうのは、「女子グループ」「スクールカースト」というものに苦しめられた女子にとってはちょっち胸が苦しいんじゃないかなぁ。
というか、数で言えば「地味で遅れてる」子の方が実は多いんですよね。
さらに、今はルサンチマンを爆発させたような曲が主流な気がします。
アイドルでも女優でも、「元引きこもり」「元いじめられっ子」を押し出している人も多く、よく言えば「親近感」、嫌な言い方をすれば「同情」を売りにするのが今のトレンドなのかなと。
だから歌詞の良し悪しでなく、「現代」という視点で言えば、この歌詞は受け入れられなかったでしょうね。
炎上するか?と言われたら微妙ですが、令和では絶対こんな歌詞を売れっ子アイドルに歌わせられないよな、と思っちゃいました。
広瀬香美「ロマンスの神様」
この曲もね~~大好きなんですよ。
というか広瀬香美さん、いいですよね。
パワフルな歌声。
高低差の激しい難解なメロディ。
まだ私が生まれてない時代の浮ついたノリが伝わってくる歌詞。
今は内省的な歌詞が主流ですから、将来「この歌詞2020年代っぽい~!」と思えるフレーズが少ないですよね。
最近の流行曲のなかで2020年代を感じられるものって、瑛人さんの「香水」くらいじゃないかなぁ…。
もちろんそんな現代の歌詞も好きですよ。
さて、そんな現代でもカラオケで歌われ続け、ニコ動でも話題になっちゃった『ロマンスの神様』ですが、20年も経てば時代の価値観にそぐわない部分もあります。
ノリと恥じらい 必要なのよ 初対面の男の人って
年齢 住所 趣味に職業 さりげなく チェックしなくちゃ
待っていました 合格ライン 早くサングラス取って見せてよ
広瀬香美「ロマンスの神様」 作詞:広瀬香美
…いや、分かりますよ。
今でもマッチングアプリで『年齢 住所 趣味に職業』を男女ともにチェックして「出会い」が始まります。
『ノリと恥じらい』の女のモテテクだっていろんなメディアが紹介しています。
そして男女ともに『合格ライン』だなんて値踏みする人もいますね。
内容的にはみんなやってるんです。現代も。
でも、どことなく、燃えそう。
「みんなやってる」ようなことでも、いくら共感を呼べそうなことでも、現代だったら歌詞にしないと思うんですよね…。
するとしても”炎上商法”。
…ほら、炎上するんですよ。
具体的に言えば数年前の『カサネテク』。
重ねドルチェというデザートのCM曲だったのですが、内容は「合コンで女の子はこんなにテクニックを重ねてるんですよ~!」という、まぁいろんな方面で燃えそうなプロモーション。
実際いろんな意味で話題になった。
男性からしたら「女って嘘ばっかり!怖い!」ってなるし、女性からしたら「こんなことしてない!偏見が過ぎる!」また人によっては「手の内を明かさないで!」ってなりますわな。
しかも狙い通り?炎上した割には商品も歌い手さんもそこまで流行しなかったというオチ…。
まとめ
ほとんど揚げ足取りでしたが。。
今回は完全にネタですね。ネタです(圧)。炎上しないで…。
現代は簡単に炎上してしまうし、揚げ足取erがいっぱいいます。
私も作詞をする立場として、気を引き締めなきゃなという思いもあっての企画でした。