Piaproなどで歌詞の提供をしているイツカと申します。
「初心者への作詞講座」第2回となる今回は、フレーズの増やし方を紹介していきます。
語彙力がなくても作詞はできる?
はじめに、「作詞をしている」と言うとよく聞かれること。
私は語彙(ごい)力がないから作詞とか無理だよね?
国語もニガテだしぃ・・・。
いや、私も語彙力はないですよ。
国語も、大学受験の時に猛勉強しましたが、それでもセンター試験の2か月前まで現代文は3割しか点数取れませんでした・・・。
大事なのは「組み合わせ力」
作詞において、フレーズを増やすために大事なのは、「語彙力」でも「国語力」でもなく、「組み合わせ力」だと思ってます。
「組み合わせ力」にも2種類あります。
言葉と言葉を組み合わせる
まず、「言葉と言葉を組み合わせる」ということ。
一般的なありふれた言葉でも、組み合わせ方によって簡単にオリジナリティのあるフレーズが作れます。
たとえば、西野カナさんの歌詞は、難しい言葉が使われていません。でも、印象に残る楽曲が多く、歌詞も共感を呼んで人気ですよね。
例えば「会いたくて会いたくて」のサビはとても印象に残ることで話題になりました。
しかし、「会いたい」も「震える」も、どちらも一般的に使われる言葉で、どちらかを使ったからといって「語彙力豊富だなぁ」なんて思わないですよね。
「会いたくて」→「震える」という言葉の組み合わせ方によって、一気に記憶に残るフレーズになっているのです。
「会いたいよ、寂しいよ」ではなく、「会いたくて震える」だからいい。
「悲しくて心が震える」ではなく「会いたくて震える」だからいい。
インパクトもあり、かつ失恋したときのネガティブな感情が的確にまとめられたフレーズです。
テーマとテーマを組み合わせる
「組み合わせ力」の2種類目は、「テーマとテーマを組み合わせる」。
基本的に、「恋愛」「友情」「応援」など、歌詞は1つの大きなテーマが軸になっています。
ただ、テーマが恋愛だからといって「あなたを愛しています I love you」だけを歌詞にしても、あまり印象に残りません。
そこで、大きなテーマ+他のテーマを組み合わせることによって、「印象に残る」「想像しやすい」歌詞になります。
たとえば、aikoさんの「カブトムシ」は、「恋愛×カブトムシ」。「あなた」に惹かれる「あたし」を、蜜に誘われたカブトムシに例えた恋愛ソングです。
SMAPの「世界に一つだけの花」は、「応援×花」。一つ一つ個性がある花のように、ナンバーワンでなくオンリーワンでいいんだよ、という優しい応援ソングです。
どちらも、「たとえ」や「具体化」となるもう一つのテーマを持ってくることで、ただ「好き」とか「オンリーワンだよ」と伝えるだけの歌詞よりも想像しやすくなりますね。
まとめ:「組み合わせ力」=「フレーズ量」
さきほど紹介した歌詞は、どれも難しい言葉は使っていません。
会いたくても、カブトムシも、花も、子供でも分かる言葉ですが、「”会いたい”と”震える”」「恋愛とカブトムシ」「花とオンリーワン」という組み合わせによってオリジナリティが生まれています。
友人との会話程度の語彙力でも、感情を表すのに適切な言葉同士・テーマ同士の組み合わせによって、いくらでもフレーズは生み出すことができます。
語彙力が重要ではないことは分かったけど、
組み合わせるのが難しいんだよ!
そうなんですよねぇ・・・。
でも、語彙力って記憶力と関係するかもしれませんが、組み合わせ力にはたくさん言葉を覚える必要がありません。
「組み合わせ力」は、誰でも鍛えることができ、鍛えることで使えるフレーズを増やすことができます。
使えるフレーズの増やし方
歌詞で使えるフレーズを増やすには、「組み合わせ力」を鍛えることが重要だとお話しました。
その組み合わせ力の鍛え方自体も、いろんなジャンルの言葉選びを学び、歌詞に「組み合わせる」ことが重要になります。
歌詞を分析して学ぶ
当たり前ですが、歌詞を書くのですから、学ぶべきものは既存の歌詞です。
でも既存の歌詞のパクりになって、オリジナリティが出ないんじゃないの?
私も初心者の時はそう思ってました。
でも学ぶべきは「どんな言葉を使っているか」よりも「どんな組み合わせ方をしているか」なんですよ。
絵を描くときも、「どんなペンを使うか」「目から書くのか、輪郭を描くのか」は他の方の描き方を真似しながら、自分らしい絵柄が完成しますよね?
先ほどの西野カナさんの「会いたくて会いたくて」も、「会いたい」と「震える」を組み合わせてしまったらパクリになりますが、「振り切れた感情を、形容詞でなく動詞で表現する手法」を真似することはパクリになりません。
「もどかしくて壁をなぐる」とか、「じれったくて歯ぎしりが止まらない」とか、、、上手い例えが浮かばないので、試しに考えてみてください(丸投げ)。
お笑いから学ぶ
お笑いって一見歌詞と関係なさそうに感じますよね。
でも私はけっこうお笑いから歌詞のヒントや使いたいフレーズを学んでいます。
お笑い芸人さんの「例えツッコミ」の考え方って、作詞をするうえでも役に立つんですよ。
見て、聞いて、感じたことを、他のものに例える。
例えツッコミに変換すると、宇多田ヒカルさんの「Automatic」のサビは「お前の隣はパラダイスか!」になります。
あいみょんさんの「マリーゴールド」のサビも、「きみの麦わら帽子はマリーゴールドか!」みたいなツッコミに変換できます。
・・・要は、日常の出来事に例えツッコミをすることで、歌詞の組み立ての訓練になっちゃうんです。
彦摩呂さんの「味の宝石箱や~!」というフレーズが流行りましたよね。
「宝石」が洗練されて高価な印象を受ける名詞で、さらに「箱」が付くことで鮮やかさが思い浮かびます。
例えツッコミを研究しながら、日常の出来事にツッコむ練習をすると、おのずと使えるフレーズも増えていきますよ!
アニメやドラマから学ぶ
歌詞と言うと、「詩」のイメージが先行するからか、「文学」とひもづけられることが多い印象です。
でも、歌詞はあくまで「メロディにのせるための詩」です。
つまり、歌詞は目で読むものではなく、耳で聴き感じるもの。
歌詞のフレーズの参考にするものとしては、小説や漫画よりも、実はアニメやドラマの方が適しているのです。
もちろん、書き物からインスピレーションを受ける方もいますし、どっちがいいというわけではありません。
ただこの記事を読んでいる「初心者」の方が作詞を学ぶのにおススメしたいのは「言葉を聴ける」コンテンツです。
アニメやドラマを視聴することで、「耳にのこるフレーズ」や、「いい意味で引っかかっる=フックのあるフレーズ」が掴めてきます。
まとめ:誰でもフレーズは思いつくようになる
作詞の初心者がフレーズを増やすために必要なことをまとめてみました。
このブログでは「言葉」を中心に、「作詞のしかた」「作品の言葉の考察」をしています。