松田聖子ちゃんといえば、夏の曲がとても多いですよね。
しかも時代は昭和。
今と違ってバブリーな雰囲気が歌詞の世界にも漂っていて、背伸びをしない自然体な夏が描かれています。
そんな聖子ちゃんの夏歌の中から、フレッシュ!フレッシュ!フレッシュ!というサビが印象的な『夏の扉』の歌詞で気になる箇所がいくつかあるので、状況を考察してみました。
1番‐『私』の変化と、ためらう『あなた』
髪を切った私に違う女みたいと
あなたは少し照れたよう
前を歩いてく
作詞:三浦徳子
バカ野郎!!!
『私』は、『私』自身の変化を褒めてほしかったのに!
いやわかりますよ、イメチェンした恋人を見て「他の人と付き合ってるみたい…新鮮な気持ち…」っていうポジティブな印象を抱いてくれてるのは。
でも『私』が期待してたのは違う言葉なのです。
綺麗だよとほんとは
言って欲しかった
作詞:三浦徳子
これです。
「変化した『私』」を褒めてほしかったのであって、決して「変化」自体を褒めてほしかったわけではないのですよ。
この辺りの心情は、自分自身でも理解が難しいところなので、きちんとモヤモヤを言葉にできる『私』は素敵です。
あなたはいつもためらいの
ヴェールの向こうね
作詞:三浦徳子
『ためらい』に隠された気持ちに『私』は気づいています。
本当は『あなた』は『私』を褒めてくれようとしたけど、照れ隠しで『違う女みたい』なんて言ったのです。
『いつも』ということなので、シャイな『あなた』に気づいている『私』は一枚上手ですね。
フレッシュ!フレッシュ!フレッシュ!
夏の扉を開けて
私をどこか連れていって
作詞:三浦徳子
『フレッシュ!』というワードが、夏にぴったりな突き抜けた爽快感を印象づけてますな。
『夏の扉』というのは、シャイな『あなた』が『ためらいのヴェール』をくぐって、今までとは違う二人になるということでしょうか。
私の髪型も変わったことだし、あなたも変わって『フレッシュ!』になろうぜってことだと解釈しました。
フレッシュ!フレッシュ!フレッシュ!
夏は扉を開けて
裸の二人包んでくれる
作詞:三浦徳子
『夏の扉』でなく、『夏は』と変化しています。
つまり『あなた』も能動的に変化すべきだけど、この夏という季節も二人が変化するきっかけになり得るということですね。
夏はちょっと羽目をはずすのも許してくれるから、『ためらいのヴェール』を脱いだ『裸の二人』(=ありのままの二人)を受け入れてくれます。
2番‐『あなた』の変化
車が通りすぎて二人を分けてゆく
あなたは道の向こう側
何か叫んでる
好きだよと言ってるの
まさか嘘でしょう
みんなが見てる目の前で
どうかしているわ
作詞:三浦徳子
これは確かにどうかしてる。
昔の歌謡曲の登場人物ってどうかしてますよね。
経済成長期は男女の情熱もおかしくさせていたのでしょうか。
不況しか知らない平成生まれの私はちょっと羨ましいです。
さておき。
『あなた』は完全に『ためらいのヴェール』を脱皮してしまいましたね。
これも夏のせいってことです。
クリープハイプの『ラブホテル』という曲でも『夏のせい夏のせい夏のせいにすればいい〜』って歌詞がありますし、RADWIMPSの『セプテンバーさん』でも『夏ってだけでキラキラしてた』というフレーズがあります。
夏はそれだけで『ためらいのヴェール』を脱いで全裸になる免罪符になってくれるのです。
2番で『あなた』はだいぶ変化しましたね。
『夏の扉』の向こうには、関係性が変わってゆく二人の姿があるのです。
夏という季節の魔法のような特性が印象的に描かれた「これぞ昭和歌謡!」な歌詞でした。
昭和いいなぁ〜〜。