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「まちカドまぞく(2巻)」セリフの背景や元ネタをメタ的に考察【祝アニメ2期!】

前回、まちカドまぞく単行本1巻のセリフについてメタ的、小ネタ的なセリフ考察をした。

今回も同様に、2巻に登場するセリフやタイトルから、物語の背景や、作者事情などの考察をしていく。

※解説はサイト主(イツカ)独自のものなので、原作者の意図と必ずしも合致するものではないことをご了承ください。

筋のゲシュタルト崩壊(P.19)

桃がシャミ子に筋トレをさせる回のタイトル。

ゲシュタルト崩壊とは、一つの文字を持続的に注視することによって、その字の認識が遅れるという現象のことである。

ずっと同じ字を見ていて、「あれ、筋肉の『筋』ってこんな字だっけ?」となる、あれだ。

ちなみに行場(1983)の実験では「25秒同じ字を注視すると、50%の割合で認知的な崩壊が起き、回復までに20秒ほどかかる」とされている。

薄皮大福がこわい(P.22)

シャミ子が桃に怖いものを訪ねた時の回答。

疑いようもなく、有名な落語の「まんじゅうこわい」が元ネタ。

怖いものを聞かれた人が「饅頭が怖い」と嘘をつき、それを聞いた人たちはまんまと騙され、彼を怖がらせようと饅頭を差し入れる…と、簡単にまとめるとこんな話。

桃の場合は、「ここの大福が苦手なのは嘘じゃないよ」とのことだが。

神に選ばれしコンパクトフォルム(P.28)

タイトルのR145というのは、たまさくらちゃんの着ぐるみの身長制限が145cmということ。

私も某人気ゆるキャラの「中の人」のバイトをしていたことがあるが、そのバイトの募集要項はR150だった。

ゆるキャラは大きいと子供に威圧感を与えてしまうため、どうしても小さく作らざるを得ない。

バイトができるのは一般的に高校生以上ということを考えると、140cm台の人材はなかなかレアなのである。

そう考えると、おそらくたまさくらちゃんの中の人の代理を探すのは困難を極めており、「たまさくらちゃんの急な代打」と「アルバイトをしなければならない子」の需要と供給がぴったり合うことはまさに神に選ばれしタイミングだったのだ。

…ちなみに着ぐるみ豆知識として、着ぐるみには大きく2パターンある。

たまさくらちゃんのように頭が外れるタイプのものが漫画やアニメでは一般的。

もう一方は頭から足まで一体となったパペット状のものに空気を入れて着る。

後者は常に風を内部に送っているので涼しいが、バッテリーを内側のポケットに入れているので少し重い。

ギラファノコギリシャミ子だ!(p.51)

ギラファノコギリシャミ子だ!

甲虫王者ムシキング、今の若い方は分かるのだろうか…。

その中でのセリフをもじったもの。

後期高齢者(P.64)

2008年に「後期高齢者医療制度」が発足した。

後期高齢者とは75歳以上を指し、その言葉が登場した当時は「失礼だ」とずいぶん話題になった。

メソポタミア文明の時代から生きている(?)シャミ先は、もちろん後期高齢者、ということになる。

フォロワー80人(P.67)

地方のご当地ゆるキャラのマーケティングは、その土地の公務員にゆだねられていることが多い。

前述の通り私はゆるキャラの「中の人」のバイトをしていたが、そのキャラクターのツイッターフォロワー数は2020年12月時点で2万人弱。

全国でイベントを行ったり、SNSを多く活用したり、全国ゆるキャラグランプリでは上位5位以内に入ったこともある。

都道府県レベルの公式ゆるキャラということもあり、ご当地キャラとしてはまぁまぁ予算を使われている方だと思うが、それでもフォロワーは2万と、芸能人などと比べてしまうと物足りなさがある。

これらを加味すると、「市」レベルの無難なデザインのゆるキャラのフォロワーが2桁しかいないというのもまぁまぁ妥当である。

…とはいえ、バク宙熱々おでんやヤバめのアメといった強烈な個性があれば、SNS運用を上手くやればバズは容易なはず。

たまさくら市は、ぜひ有能なマーケターを雇ってSNSを活用する層にアプローチしていただきたい。

煮詰まれ!魔法少女会議(P.68)

鍋をしながら魔法少女とまぞくが会議(?)するシーンのタイトル。

会議が「煮詰まる」と、議論が白熱して鍋が「煮詰まってしまう」意味をかけたとても面白いタイトル。

会議が「煮詰まる」というと、なかなか結論が出ないなどのマイナスイメージで使われることが多いが、じつはそれは誤用である。

会議が「煮詰まる」という使い方だと、議論が出尽くして収束に向かう、プラスイメージで使うのが正しい「煮詰まる」である。

このタイトルを見るに、作者様はしっかりと正しい意味を心得て使用していることが分かる。

(参照:文化庁HP

…やはり博識だ。

ゲス先(P.75)

まちカドまぞく2巻が発売された2016年と言えば、そう、「ゲス」という言葉があらゆるメディアで使われていた時期だ。

2016年の頭に報じられた、バンド「ゲスの極み乙女。」のボーカルとタレントベッキーの不倫。

そのスキャンダルが、バンド名からもじって「ゲス不倫」と呼ばれたことを皮切りに、連日のテレビ番組で「ゲス」「ゲス」と、なにかにつけてゲスが連呼されていた時期だ。

日本中で話題になった報道だが、スキャンダルなんてすぐに風化してしまうので、実は知らない人も多いのではないかと思い紹介した。

あんなに流行っていたのに、そして「ゲス」自体一般的な言葉であるのに、今やちょっと古臭さまで感じる言葉になってしまった。

…そう思うと、ニコ動を中心に使われている「い〇む語録」の息が長いことは本当に謎である。

桃の魔力はいってる(P.76)

元ネタは「インテル、はいってる」

Intelの昔のCMのセリフである。

「てる」同士で韻を踏んでいてなかなかゴロの良い言葉で、人々の耳に残りやすかった。

後に英訳され、「Intel Inside」とこれまた「In」で韻を踏むという最高のキャッチコピーが誕生する。

「インテル、はいってる」はスラング的に人に対しても使われ、PCのようなスキルや能力を持った人に対してしばしば「インテルはいってる」と言われることもあった。

ちなみに次のコマの「踊るごせんぞ見るまぞく」は「踊る阿呆に見る阿呆」という阿波踊りの歌の一部をもじったもので、これまたゴロが良く、意味も通っている。

ちょっ…そこにアイスはやめて!(P.83)

…どこにアイスを入れたんですかねぇ。

その答えは4コマ目を見れば分かる。

ミカンの服が乱れ、襟のボタンが外れている

桃に連れられてすぐに「配下になります~!」と言っていることから、桃は短時間で「配下になれ」と命じながらアイスを「そこ」に当てていたことが分かる。

桃とミカンの身長差も加味すると、桃はミカンにお得意の飛躍した理論で「いいから配下になれ」と耳打ちしつつ、ボタンを外し、胸元にアイスを差し込んでいたのではなかろうか。

…その場に居合わせたい…。

イメージボキャ貧(P.89)

ボキャ貧は「ボキャブラリーが貧相」の略。

今は「語彙力」という言葉がよく使用されるため、あまり使われなくなった。

ちなみに昔「ボキャブラ天国」という番組があり、その略が「ボキャ天」だったものをもじって生まれたのが「ボキャ貧」という言葉だと言われている。

ごせんぞテレフォン(P.90)

「テレフォン」に、タイトルの「ライフライン」から想起されるものといえば。

そう、「クイズ$ミリオネア」という、これまた2000年代のテレビ番組である。

クイズに正解し続けた挑戦者は、正解した数に応じて賞金を得られるのだが、リタイアすればそれまでの賞金を得、不正解になれば賞金が0になるというクイズ番組。

その中で挑戦者が「ライフライン」を使って何かしらのヒントを得られるのだが、そのうちの一つが任意の知人に電話越しに会話をできる「テレフォン」であった。

…当時の一視聴者の私からすると、ライフラインの中で一番活躍が薄かったのがこの「テレフォン」だったと記憶している。

肝心なときに活躍できないごせんぞテレフォンも、同じような匂いがする…。

以上、まちカドまぞく単行本2巻のセリフやタイトルのメタ考察をした。

やはり作者様はテレビっ子説が私の中で強まるばかりで、とても親近感が湧いた。

テレビネタは同世代でないと知り得ない感覚的なものもあるため、この記事で「なるほど!」と思っていただけたら幸いだ。

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