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【歌詞考察】チャットモンチー「愛捨てた」-男性的な失恋感情

「愛捨てた」は、ドラムの高橋久美子さん作詞、

ギターボーカルの橋本絵莉子さん作曲の楽曲です。

2008年11月5日リリース(もう10年・・・!)の染まるよのカップリング曲です。

カップリングコレクションの「表情」というアルバムにも収録されています。

私の中の「最強失恋ソング」のうちの2つが「染まるよ」「愛捨てた」なのですが、今思えばすごいシングルだったんですね。

タイトルからも察しがつきますが、失恋ソングです。

中でも「愛捨てた」「間違いを正しては崩してしまった」などの表現から、

「私」は自らの過ちでその恋を終わらせてしまったのでしょう。

失恋したのにお腹が空いた

この楽曲の中で一番印象に残る、且つ共感を呼ぶのがサビの部分ではないでしょうか。

「こんなに悲しい夜でさえやっぱりお腹は空くのだから

私はまだ人を好きになるのでしょうか」

作詞:高橋久美子

「まだ人を好きになるのでしょうか」、つまり、

「もう人を好きになることなんてない」と感じていたんですね。

失恋したことがある人はきっとみんな共感する。

愛を捨てたあとも「愛してる」と言ってしまうくらいです。

全身全霊をかけて愛していた相手を失って、

これと同じくらい好きという感情が他の誰かに向くことがないのではないか?

と感じるのも無理ないです。

でも、愛していた人のことしか考えられなくなるくらい悲しんでいたのに、

お腹が空いた。

愛する人がいなくなり、想定していた未来が変わってしまうという非日常的な絶望に浸っていたのに、お腹が空いた。

「お腹が空く」という日常的な欲求が顔を出したことで、「私」に少しずつ新たな未来が見えてきたのでしょう。

失恋した時の絶望:非日常

お腹がすくという欲求:日常

そして「また好きという感情も芽生えるのかな」と思えたのでしょう。

サビは、失恋した経験のある人なら誰が聴いても共感できる部分だと思います。

男性的な「私」

「愛捨てた」が最強失恋ソングたる所以は、Aメロ部分です。

一人称は「私」で、作詞も女性なのですが、男性的な感情が印象的です。

「大切なことはいつも忘れているのに

どうでもいいことはこびりついているものね

真実がいつも正しいわけじゃないのに

間違いを正しては崩してしまった」

作詞:高橋久美子

すごく、理性的ですよね。

かつ、とても抽象的なので、やはり誰にでも身に覚えがあると感じさせます。

この短い文章で別れ方を想像させられるのがすごいと思ってしまいました。

具体例に落とし込んでみるとわかり易いでしょうか。

大切なこと・・・約束や記念日、やらなきゃいけないこと

どうでもいいこと・・・相手の悪い癖、気に触る物言い

こうしてみると、小さなことが積み重なって喧嘩別れしたのかな、などと想像できますね。

「真実がいつも正しいわけじゃない」というのは、

正論を突きつけて論破することととか、相手の感情に対して冷たい事実だけを並べて黙らせることが正しくないということでしょう。

「間違いを正しては崩してしまった」というのは、

「相手の感情を尊重せず、事実や正論だけを盾に、相手の意見を跳ね返してしまった」

といったところでしょうか。

これも具体例を挙げれば、

私が職場の異性と飲みに行くのを
あなたは嫌がる。
でも人付き合いや人脈は大事だし、
あなたが私を愛しているなら
私を信じられるでしょう?
はい論破。

というのが「真実」を言って「間違いを正す」「私」

きっと相手は「それが正論なのはわかっているけど、なんか嫌なの!」という気持ちだったと。

「私」は相手の感情的な言葉理性的な正論で押さえつけてしまったと。

・・・やっぱり具体例に落とし込むと「私」はとても男性的ですね。

もしかしたら、

冷蔵庫の悪趣味ステッカー」などの体言止めの羅列も、Aメロで言う「どうでもいいこと」「間違い」に繋がってくるのかもしれません。

例えば、電話で要件しか伝えない「私」に対し、相手はもっと声を聴きたかったのかもしれません。

この体言止めの羅列の部分は、二人お揃いの記憶とも言っていますから、あえて「二人」にしか分からないようにしてあるのでしょう。

結局何も食べずに迎えた朝

最後に、

「涙が枯れた朝でさえやっぱりお腹は空くのだから

私はまた人を好きになるのでしょう」

作詞:高橋久美子

と続きます。

あれから何も食べずに朝を迎えたんですかね。

「涙が枯れた」=泣き止んだ

「朝」=悲しい夜が終わった

とも受け取れて、暗い感情を抜けたようなイメージが湧きます。

それでも、お腹が空いている=結局まだ何も口にしていないようですね。

「私」はまだ、失恋の悲しみからほんの少し歩みを進めたに過ぎず、

「人を好きになるのでしょう」と言い切る歌詞とは裏腹に、まだまだ次の恋には進むには早いのかな、と感じる締めです。

それでは。

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