ノスタルジックなイントロところころ転調するメロディが印象的なaikoさんの新曲『ねがう夜』。
しかし複雑なのは転調を繰り返すメロディだけでなく、実は歌詞もまた複雑な女心が描かれています!
二人の関係性
君と逢って別れて何年経った?
毎日数えてる訳じゃないから多分くらいで言える時間は
経ってる気がするんだよ
作詞:AIKO
「君」と「あたし」は数年前まで付き合いがあったようですね。
「別れて」というのは「フラれた」とも捉えられますが、単に「出かけた帰りにバイバイした」だけとも捉えられます。
1年前だったら「多分」どころか「去年」と言えますが、3年くらい経つと「一昨年…?いやその前かな?」くらいあやふやになってきますよね。
少なくとも3年は経っていそうです。
長い間一緒にいたから
作詞:AIKO
さらに冒頭のこのフレーズから、二人は「長い間」付き合いがあったことも分かります。
もしかしたら恋人としては付き合ってないのかもしれませんが、そこは後から考察します。
現在の「君」と「あたし」
あぁ君はもうひとりじゃないから
元気でいてね
作詞:AIKO
「君」は、今では「ひとりじゃない」ということは、おそらく次の彼女ができたのでしょう。
だからもう夢に出なくていいんだよ
作詞:AIKO
別れて数年経っているのに、そして彼女ができたことを知ってるのに、「あたし」の夢には「君」が出てきてしまいます。
なぜかというと、、、
たまに夢でと願う夜
作詞:AIKO
願っちゃってるんですね。
夢にはもう出てこなくていいよ〜といいつつ、でも会いたいと。
あちゃ〜乙女心は複雑ですな
夢に出てこなくていいっていうのは半分強がりで半分本音でしょう。
起きてる時に思い出すより、夢に出てきたほうが好きだったときの感情とかが一気に思い出されるから、「そんな記憶呼び起こさないで!」ってことでしょう。
精神汚染受けてる惣流アスカラングレーみたいな。
「彼女ができても会ってよ!」じゃなくて、「たまに夢に出てきてほしい…」というなんとも慎ましい願いがいじらしくて…胸が痛いですね…。
期待させていった「君」の呪縛
「あたし」は実は、夢だけでなく現実でも会えると期待していたことがこのフレーズで分かります。
またねとか軽い挨拶はゴミ箱に捨てようね
作詞:AIKO
おそらく、最後に別れた日(フラれたとかではなく、バイバイした日)に「君」は「あたし」に「またね」と言ったのでしょう。
単なる別れ際の決まり文句なのは「あたし」も理解しているけど、「また会おうねという意味ではないか」と少し期待してしまっている。
そんな淡い期待を、「ゴミ箱に」捨てなきゃ!というのがこのフレーズでの心情でしょう。
しかし。
半信半疑の期待はいつも外れてかき氷の雨
作詞:AIKO
結局期待してしまって、やっぱり外れる。
好きだった人に会えるかも!って思った日は、まあだいたい会えないですよね。
そして「かき氷の雨」…ベチョベチョで寒いだけのやつ!!!
それくらいガッッッカリしてるんですよね。
半信半疑だったくせに。
いや本当は「半信半疑」というのも強がりで、ガッツリ期待しちゃってますね、これは。
二人は付き合ってなかった?
スライスするって?
引き返すつもりはないのに
心が薄くスライスする
何もないって記憶の嘘
涙でバレる
作詞:AIKO
心がスライスするってどういうことだろう?と思ったんですが、多分なかったことにしたい記憶だけ切り落としてるのでしょう。
心は「君」との記憶なんてなかったことにしたくて、でも記憶は定着しちゃって忘れられない。
そんな複雑な気持ちが涙になって表れています。
「記憶」というワードの真意
何度か出てくる「記憶」というワードが気になったので読み解いていくと、どうやら二人は付き合ってなかったのではないか?と解釈できました。
「何もない」が「嘘」ということは、二人は何かあったということは分かります。
でも付き合った経験があったのだとしたら、薄くスライスした程度では記憶の改ざんはできないですよね。
何もなかったことにできる程度の薄さの記憶。
そして「思い出」とかでもなく「記憶」というほどの一瞬の出来事。
おそらく付き合っていたのではなく、ずっと好きだった「君」と、一晩の過ちを犯したのではないでしょうか。
そこから「またね」で別れてから会えなくなり、「あたし」は忘れられないまま…だと考察しました。
悲惨!
勘違いの苺味
勘違いの苺味 あぁ君は知ってた
作詞:AIKO
「苺味」とはまた可愛らしい表現。
さっきの「かき氷」と関連したワードですね。
「またね」を「また会おうね」だとちょっとでも勘違いした恥ずかしさで顔が赤くなるのと、そんな気持ちの甘酸っぱさを表してるのでしょうか。
「君」は「あたし」の気持ちに気づいていたことを、「あたし」は今になって気づいて、余計に恥ずかしい思いをしちゃっています。
「君」を忘れられない「あたし」
風が吹いても飛んで行かない記憶
記憶は風が吹いてもどこにも行かないまま
作詞:AIKO
先ほど、二人の「記憶」は薄くスライスできる程度の一晩の「記憶」だと解釈しました。
そんな薄いものであれば風が吹けば飛んでいってしまいそうですが、そういう忘れたい記憶に限って忘れられないんですよねぇ。
まぁこれは「忘れたい」という意識がより記憶を定着させちゃうからなのですが。
切った髪で「君」を思い出す
切った髪が刺さり痛い
嫌な時に浮かんでこないで
作詞:AIKO
失恋すると髪を切るとよく言いますが、おそらく「あたし」は特に意識せず髪を切ったんだと思います。
でも、切ったばかりの髪が肌に刺さったときに「君」のことを思い浮かべてしまい、「あたかも君のことを忘れたくて髪を切ったみたいじゃん!」という気持ちになったのでしょう。
「風が吹く→髪が刺さる→君を思い出す」が飛躍して「風が吹くたびに君を思い出す」という事態にならなきゃいいのですが…。
風が吹けば桶屋が儲かる的な
壊れた胸のネジとは?
壊れた胸のネジは誰にも聞けないけど
君がつけてったものでしょ
作詞:AIKO
最後の最後で突如として現れる「ネジ」。
aikoさん、ノーヒントすぎませんか…。
いままで以上に憶測程度にはなりますが、こちらのフレーズに繋がってるのではないかと思います。
食べ飲み干したって変わらないただれた心の中
作詞:AIKO
恋愛ソングにおける「胸」というのは心を指す場合も多いです。
胸が痛いとか胸の内という言葉もありますね。
ということは、「君」が「ネジ」で留めた「壊れた胸」のは、この「ただれた心」と繋がっていると考えられます。
「君」に会えないという期待外れなことがあって、心の中がただれてしまった。
でもそんな壊れた心を、ネジで止めてくれたのも「君」だった。
具体的には、一晩の過ちで「あ、君はあたしのこと大事に思ってなかったんだ」って思えたのかもしれません。
最後のフレーズは唐突すぎて憶測の域を出ませんが、「君のせいで期待して壊れてしまう心を、君のおかげで抑えていられる」という考察がしっくりきました。
結局どんなストーリー?タイトルの意味は?
まとめるとこんなストーリーです。
・「あたし」と「君」は出会ってからの付き合いは長かったが、恋人同士ではなかった。
・「君」には彼女ができたから諦めなきゃと分かってはいるけど、夢には出てきちゃうし、自分でもそう願っちゃってる。
これらを踏まえてタイトルの意味を考察してみます。
そもそも、歌詞の「願う」は漢字なのに、タイトルはひらがなで「ねがう」なんですよね。
ということは単に歌詞に出てきた「夢に出てきてと願う」以外の意味もあるのではないでしょうか。
そう、「あたし」のもう一つの願いは「夢に出てこないで」。
タイトルを漢字にしてしまうと歌詞中の「たまに夢でと願う」にしか紐づかないため、あえてひらがなにしたのではないかと考察しました。
タイトルにまで、複雑な乙女心を忍ばせるのがaiko大先生だと思うので…。