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【歌詞考察】東京事変「緑酒」フレーズをじっくり考察してみた

先日リリースされたアルバム「音楽」にも収録された楽曲「緑酒」。

「緑酒」は”りょくしゅ”と読み、良いお酒のことです。

疲れた国民が仕事終わりに見る番組のテーマソングということで、そんな視聴者をねぎらうフレーズも多いです。

曲名の「緑酒」ってなんのこと?

何度も出てくる「自由」は?

「貴様」って誰?

言い回しが独特な東京事変の歌詞を、具体例に落とし込みながら解説&考察していきます!

最終形態=我々が大人から受け継いだ世界

みんなみんな、お疲れ様。

乾杯日本の衆今日は今日でまあ一つ美味しいかどうかはさておきだ

各種生業お疲れさん

作詞:椎名林檎

「美味しいかどうかはさておき」というのは、良い日だったとしても大したことなかったとしてもとりあえず自分を労いましょうというニュアンスです。

…後々「本当の味」が出てくるのですが、その対になっています。

まだ日本の衆たちは本当の味を知らないけど、とりあえず今日のところは乾杯しましょう、と読み解きました。

最終形態とは?

小さな頃描いた将来大人は列国の制度のめぼしき面選んでは取り入れ

最終形態を拵えた

作詞:椎名林檎

「最終形態」というのは、大人が作ってくれていた世界のことだと解釈しました。

我々が小さかった頃の大人たちが『列国の制度のめぼしき面』=海外の良い制度や文化を取り入れてできたのが、今の「最終形態」。

「最終形態」となった今の世界を大人になった我々が受け継ぎ、また作っていくのです。

最終形態を進化させる立場へ

気付いたら違っていたバトンタッチが済んで自分らは扶養側へ

責任を負う立場になった

作詞:椎名林檎

大人が作った「最終形態」をバトンタッチされ、今度は我々が大人。

子や次世代を育てて、世界を選ぶのも変えるのも現状維持も”自己責任”になりました。

「最終形態」はあくまで大人が作ってくれた世界のこと。

そこから自分の世界(生活や生き方)をどう広げるかは、自分次第になるのです。

進化させなきゃいけないのに

時間がない金すら無い無い尽くしという増してどうしてこう

心身消耗してんだっけ

作詞:椎名林檎

自分たちは責任を負う立場になり、新しい世代を扶養する側になりました。

が、時間もお金もない、というのが現代日本の大人たちです。

時間は作るもの、自分の人生は自分の自由と責任で切り開くものだ!

…というのは、実際のところ理想論ですよね。

現実は忙しくて人生を豊かにさせるために時間もなけりゃ、その割にお金もないという状況の人が多いです。

ぺてんとは

全員善人、ではない

乾杯日本の衆信じていたい遍く全員善人でしょう疑念なぞ抱いても肝を

突いちゃならん

作詞:椎名林檎

みんなが善人であると、信じたい。

実際はそうではないからこそ、「信じていたい」というフレーズが出てくるのです。

この後出てくるワードですが、「ぺてん」が世の中にはたくさんいます。

でもつまらない常識を信じきって疑わない人が多いので、そういった「ぺてん=国民を搾取する常識や支配者層」に疑念を抱く人間は変人・非常識扱いされてしまうのです。

現代のペテン師の手口は巧妙ですよね。教科書やテレビ、広告を通じて「こうしなきゃいけない!」「これを持ってない人は負け組!」といったイメージを植え付けて国民から時間とお金を奪うんです。

膨満感、嚥下とは

大きな不安孕んだ正体憚る膨満感に噦いてどこから嚥下できようか

未だ皆目消化不良だ

作詞:椎名林檎

先ほどの「肝」に対して「膨満感」や「嚥下」など、体調に関わる用語が出てきています。

なんとな~く感じている不安を「膨満感=お腹の苦しさ」に例え、その不安が”消化”しきれず現実の問題をどこから「嚥下=解決」したらいいか分からない!といったところでしょう。

たとえば格差問題などは、富裕層にも貧困層にも福祉にも問題があり、どこから解決したらいいものか分からないですもんね。

ぺてんとは

気付いたら許していたお年召した御仁と幼気な御子さん方は

恥ずかしそうに黙ってんだ

ぺてんのない世の中を直ぐに作んなくちゃ

そう願わくばいっそ老いも若いも多弁であれ

作詞:椎名林檎

ここは解釈が難しいので整理してみました。

お年寄りと子どもが恥ずかしそうに黙っていることを受けて、ぺてんのない世の中を作ろうとしています。

つまり、ぺてんがあると彼らは「恥ずかし」くて「黙っちゃう」。

お年寄りと子どもの共通点は、「世間を知らない」「世間に染まっていない」ことにあります。

悪い言い方をすれば「世間知らず」ですかね。

お年寄りは現代の技術で言葉通り「ぺてん=詐欺」の標的になりやすいです。

子どもは詐欺というよりも、何も知らない真っ新なアタマに「教育」という名の洗脳を施されていきます。

洗脳と言うと聞こえは悪いですが、たとえば「女の子は普通はピンクが好き」「挨拶はしなきゃいけない」というのも一種の洗脳ですよね。

ぺてん=詐欺、洗脳的な教育、つまらない常識

そういう「無意識に刷り込まれる常識」を含め、世にはびこるぺてんを気付いたら許してしまっていた

ここで言う「許す」は「許可する」ではなく「(悪いことを)見逃してしまっている」の意味です。

何が本当か分からない者は「世間知らず」として口を紡ぐしかありません。

でも「ぺてん」がなくなればそんな恥ずかしさを感じる人もいなくなり、むしろ多弁=自由におしゃべりできます

この歌詞における自由・貴様

自由とは

自由よいいように搾取されないで安く売らないで終始貴様は誇り高くあって頼むよ

自由フェイクじゃない元来の意味を見せて騙るまじ腐るまじ追い続けていたい貴様をずっと

作詞:椎名林檎

自由とは、「束縛されないこと」「好きにできること」の2つの側面があります。

「からの自由」と「への自由」ですね。

それが”元来の意味”なんです。

でも現実は搾取され、安く売られている。

具体的には会社で働くという固定観念に束縛され、好きでもない仕事をし、それを「自由に生きている」という人が多いですよね…。

せっかく生き方も「自由」に選べるのに、「ぺてん=常識や圧力」に負けて搾取されないくてもいいのに…

…という考え方はアーティストらしいというか、庶民としてはなかなかそんな理想通りには叶いませんよなんて思ってしまいます。

結局自由って責任も伴うし(責任はさっきの歌詞でも出てきましたね)、選択も苦痛なんですよね。

だから結果的に隷属して搾取されることを望んでしまう人が多いのかもしれません。

貴様とは

ちなみに貴様は本来めちゃくちゃ丁寧な敬称です。

今では嫌味な意味になっていますが。

この歌詞での貴様は、”自由”のことです。

もっと言うと、自由であって然るべき「日本の衆」のことです。 

貴様と呼ぶに相応しい尊い存在なのだから、搾取されずに自由でいてほしいという願いが歌われています。

”選ばれざる国民”

果たしても選ばれざる服従層と知らん間に選ばれし支配層を結ぶ争点

自由という名の富買い叩いて奪い合う尊厳

作詞:椎名林檎

「庶民の”自由”を生まれながらの勝ち組が安い給料で買ってしまっている」という現状が表されています。

知らない間に選ばれている支配層とは、金持ちのボンボンとか、政治家とかですね。

彼らはもう生まれた時点で勝ち組です。

選ばれざる服従層というフレーズは、東京事変が「再生」したときに出した「選ばれざる国民」に関連してのものでしょう。

英語のタイトルは「Lower Classes(労働者階級たち)」でしたし。

「緑酒」の正体が明らかに

本当の味とは

乾杯日本の衆いつか本当の味を知って酔いたいから樹立しよう

簡素な真人間に救いある新型社会

作詞:椎名林檎

「本当の味」とは、先ほどから歌われている”自由”を獲得した喜びのことなのではないでしょうか。

そしてタイトルは「緑酒」。

冒頭でも説明した通り、上質な酒という意味です。

「搾取されるでもするでもなくただ自分の道を選びまっとうに生きる人々が、良い酒で酔える社会にしよう」という意味だと解釈しました。

すごく簡潔に言えば、差別や格差のない社会がいいねってことですね。

「最終形態」に対して「新型社会」

最終形態=今まで大人が作ってきたぺてんだらけの世界

新型社会=我々現代の大人がこれからつくる世界

「最終形態」はいわば海外の真似でした。

対して、「ぺてん=差別やつまらない常識」のない国ってなかなかないのではないでしょうか。

ぺてんのある今の世はあくまで「最終」の形。

そんな世の中は我々で終わらせて、「新型」の社会を作っていこうという意味だと解釈しました。

「緑酒」というタイトルの意味

次世代へただ真っ当に生きろと云い放てる時

遂に祝うその一口ぞ青々と

自由たる香さぞ染み入る事だろう

作詞:椎名林檎

「青々と」は「緑酒」にかけてですね。
緑色は、「青い」と表現されることもあります。

「次世代へ~云い放てる時」というフレーズがありますが、逆に言えば今は「真っ当に生きろ」と簡単に言えない時代ってことです。

真っ当に生きていると搾取されてしまう。

生まれながらの格差で不利益を被ってしまう。

…まぁなんか、改めて考えてみると確かにって感じですよね。

で、そういった搾取構造がなくなればみんなが「緑酒=美味しいお酒を享受できる」ってとこでしょう。

1番で、「バトンタッチ」が出てきました。

次世代=子どもに社会をバトンタッチするとき、「人を信じちゃだめよ」「他人には気を付けてね」なんて言わなきゃいけないのが今の世です。

でも、そんなことを言わなくて済むのが、さきほど出てきた「新型社会」=「真っ当に生きろと云い放てる」社会なんですね。

そうあってほしいです。…そうあらなきゃなぁ。

美味しいお酒であるように

伝う汗と涙が報われて欲しい皆の衆

作詞:椎名林檎

汗と涙は、ここでは労働の大変さのことです。

頑張っただけちゃんといい報酬が得られますように。

出来レースによってではなく、正当に業務が評価されますように。

タイトルに即して言えば、汗と涙を流して働いた夜の酒が美味しく飲めますようにって感じですね。

「自由に愛される」とは

自由よ愛しているもう遠ざかんないで傍に抱き寄せて

終始貴様を尊び敬って求める

自由嗚呼どうしてって意識せざるを得ない逃すまじ失くすまじ

愛されてみたい貴様にやっと

作詞:椎名林檎

自由を愛しているし、愛されてみたい。

これまた「選ばれざる国民=庶民」についてです。

国民はみな、お金や時間、生き方の自由を欲してはいます。

でも結局自由に愛されてはいない=自由ではない。

それが多くの国民の現状です。

歌詞の中で、「日本の衆」「皆の衆」というフレーズが何度かあります。

この歌詞を歌う林檎さんから見た「(自由に)愛されたい」というのは、単に自由になりたいというわけではなく、「皆の衆」が格差や搾取から解放されて、自由な生き方を能動的に求めてほしいという意味なのではないでしょうか。

同じくアルバム「音楽」に収録された「赤の同盟」の歌詞考察記事もありますので、ぜひに!

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