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【歌詞考察】東京事変『赤の同盟』-大きな愛のテーマ

ドラマ「私たちはどうかしている」の主題歌となっていた『赤の同盟』。

抽象的で哲学的な歌詞を、具体例に落とし込んで私なりの解釈で解説していきます。

ちなみに私はドラマを見ていないので、ドラマに絡めることなく、曲を聴いた感覚を元に「歌詞自体」を考察しています。

1番-大きな愛と小さないざこざ

この曲のテーマをはじめに提示

ええい何が起きても結構

どんな騒ぎへもてんで乗じません

きっと全人類手を取り合えるように(アーメン)

作詞:椎名林檎

のっけから「全人類」という大きなテーマで始まります。

この最初のフレーズが、これから繰り広げられる歌詞の全体的なテーマだと言えます。

『全人類手を取り合えるように』という優しく大きな愛をゴールとして『どんな騒ぎへも』の騒ぎの部分についてこれから語られていく、という構成です。

この大きなテーマを軸に、メロディが変わるごとに切り取る角度ももくるくる変わっているようで、なかなか解釈が難しかったのではないでしょうか。

「愛」のない行為

嗾けられて狼狽えたって

ヒントも答えもてんで生じません

先手打っといてもう逆ギレしないで(ガッデム)

作詞:椎名林檎

けしかけて、うろたえる。

こんな「愛のない」小さな争いの様子を私たちは昔からテレビで、最近はネットで、よく見かけます。

たとえば芸能人の不倫報道。

けしかける/先手打つ:不倫をすっぱ抜くメディア

うろたえる     :すっぱ抜かれた芸能人

逆ギレ       :メディア「謝罪はないんですか!」

また、たとえば政治批判。

けしかける/先手打つ:コロナ対策に関して非難するネット民

うろたえる     :政治家

逆ギレ       :ネット民「ほらやっぱり政治家は使えない!」

具体的に落とし込むとこんな感じでしょうか。

で、「ヒント」や「答え」というのは、最初に出てきた「全人類」が手を取り合えるような愛ある世界へのものです。

不倫報道でいくら「愛のない夫婦」を報じても、じゃあどうすれば全人類が愛に溢れて生きられるかは何の答えも出てこない。

政治家を批判したところで、全人類が手を取り合って、みんなが幸せになる方法なんて出て来やしない。

結局これらの「けしかける」といった行為は何の解決策も、ましてや愛も生まないんですよね。

傍観者視点からの警鐘

まあ一回打算を排してよ警戒心

この緊張状態を解いてよ嫉妬なども処分

ちょうどいいはずお互いに

弱点は断固正視しないもんね

自分自身もろとも見失う

作詞:椎名林檎

ここのフレーズは「お互いに」という言葉もある通り、「けしかける」側と「うろたえる」側どちらにも言えることでしょう。

先ほどの例で言えば、政治批判をする側もされる側も緊張状態です。

批判される政治家は、国民の批判を買わないよう「警戒」し、「打算」的に耳障りのいいことを並べます。批判する国民は、騙されないよう「警戒」し、傷つけるような言葉を「打算」的に浴びせます。批判する側にはおそらく高給取りである政治家に対する「嫉妬」も相まって、恵まれている人は傷つけてもいいという思考になっていることでしょう。

『弱点』は「自分の前提が崩れること」と、ここでは解釈しました。

また政治批判の例えで見てみましょう。

政治家のおしごとについては国をいい方向にもっていくことが彼らの仕事だと思っています(小並感)。でも、批判されないよう立場を失わないよう振舞うことで国が悪い方向に動いてしまったら、そもそも彼らが政治家でいられなくなる可能性だって出てくるわけですよね。

政治家の仕事の「前提」が崩れたら批判もなにも政治家でいられなくなる、という悲劇が起きます。

政治批判をする人は、もし「今どきの若者のために政治なんかするか」と国会のおっさんおばさん達がこっそり徒党を組んでしまったら、いつまでも批判なんかできませんよね。

政治家がまともに職務をこなすという「前提」が崩れたら、批判してられないどころか割を食うのは自分たちなのです。

…政治家という例えが大きすぎて分かりづらくなってしまいましたが、夫婦間のいざこざなんかもそうですよね。夫婦だから何でも言い合っているけど、どっちかが「離婚」だと言い出して夫婦でなくなるのが彼らの「弱点」です。

で、その「前提」がお互いに崩れたら今よりも損が生じるから、緊張状態でお互い弱点を見ないフリしてるのが「ちょうどいい」んだねぇということです。

さらに、そうやって「じゃあ前提が崩れたら?」ということを顧みずに愛のない行為を繰り返していると、心がすり減って「自分」を見失ってしまいます。人の悪いところを見つけて非難する行為は、往々にして自分に対してプラスの作用はもたらさないですからね。「じゃあどうしたらいいの?」「自分はこんなことしてどうなりたいの?」というものがなければ、自分をどんどん見失ってしまうよということです。

本能で「愛」したい

大嫌いの定義や大好きの方程式とは

バイアス決め込んで競って不毛です

よって言語を経由しない原初の衝動を

呼び覚ましたい 思い出したいです

作詞:椎名林檎

サビでは先ほどとは少し違う、「恋愛」寄りの愛について語られます。

すごくシンプルに言えば「本能で愛したい」というところでしょうか。

言語があるから、「こういう人は嫌われて然るべき」「こういう条件だから好き」という、定義や方程式ができてしまって、打算的な付き合いになってしまうのでしょう。だからさっきの例えだと「不倫する人は嫌うべき」で、「偉い人は痛い目を見るべき」となってしまうわけです。

そういった「条件」や「常識」という誰かが決めたバイアスではなく、「人間の本能のまま、心から好き嫌いをジャッジしたい」ということでしょう。でないと、自分が本当に好きなのか、はたまた世間的に良しとされているものを好きだと勘違いしているか分からなくなってしまいますからね。

「呼び覚まし『たい』」「思い出し『たい』」と理想形になっているのは、我々はもう言葉を知ってしまい、原初の衝動だけではジャッジできなくなったから。でも、出来る限り自分の心に耳を傾ける、ということはできるはずですよね。

突っ走ってしまう「愛」

愛を宿してどうしてなお

恐怖へ追従しているの

信じて疑うを昼夜往復し

関係に支障を来すまで

突っ走っちゃうどっちへも

止まれない制御不能です

早よ捕まえてくれ

まだ知り合えていない

作詞:椎名林檎

これは恋愛に例えるのが一番分かりやすいでしょう。

恋人のことを愛しているし信じてるけど、裏切られるのが怖い。で、疑いすぎて相手が「なんで信じてくれないんだよ!」となったり、逆に過信や期待をしすぎてちょっとその期待から外れると「なんで思い通りにならないの!」と思ってしまったり。過信と疑念、どっちにも行き過ぎて制御不能になってしまう。といったところでしょうか。

恋愛に限らず、人は誰かを愛する心を持っています。まぁ人に限らずかもですが。でもその「愛」を持っていても、いや持っているからこそ、裏切られることへの「恐怖」が芽生えてしまうよねというのがこのフレーズの解釈です。

そんな「突っ走っちゃう」私を、捕まえてとどめていてくれと。

「知り合えていない」とは

『まだ知り合えていない』というのは解釈の幅があるかと思います。

①まだ本当の愛を知っていない

②まだ本当の自分の心が見えていない

③まだお互い知ろうとしていない

①信じすぎたり疑いすぎたりするばかりで、まだニュートラルに想い合える関係を知らないということ。素直に考えるとこの解釈に至りやすいのではないでしょうか。

②先ほどの『自分自身もろとも見失う』から続いていると考えました。まだ自分の「本能」の声に耳を傾けたことがないことを皮肉ってるのではないでしょうか。

③そもそも「知り合いになる」という意味ではなく、お互いをちゃんと知っていないという意味の「知り」「合う」なのではないでしょうか。

個人的には③かなと思うのですが、わざわざ解釈違いを起こすような言葉を選んでいることから、③だけど①と②も含む、というのもあり得るかなと。

2番-相補的な関係

現代ならではの「狡猾な罠」

ねえ弄ぶにもエチケットを

狡猾な罠で釣ってはいけません

礼を欠いといて即駆け引きしないで(ジーザス)

作詞:椎名林檎

昨今はマッチングアプリでの恋愛が当たり前になってきました。私も数年前使ったことがあったのですが、初対面なのに礼儀もなく駆け引きに持ち込む輩がたくさんいましたね。

従来の出会いはサークルや会社など集団の中で発生するものが大多数でしたが、マッチングアプリだと初対面から1対1、それも恋愛対象として対峙するわけです。そうなると「共通の友人」という他人の監視がないから、自分のことも偽り放題、騙し放題なわけです。

ここのフレーズはもちろんマッチングアプリを皮肉ったものとは限りませんが、「狡猾な罠」が発生しやすいのはやっぱり現代ならではの現象かなと思いました。

「あの一切合切」って?

じゃ一回出会い直してよ悍ましき

あの一切合切葬ってよ新しく

感じるでしょうお互いの

相乗効果欠陥を美点として動かせる凸凹なんだと

作詞:椎名林檎

「好きになってもらいたい」「都合よく扱いたい」…そんな一切合切の駆け引きをいったんマッサラにして、出会い直す。そうやって人と人で対峙することで、お互いにいいところ悪いところが見えてくる。

自分のいいところと相手のいいところ、自分のダメなことと相手の得意なこと。

それらの凸凹が歯車のように上手くはまることで、人間関係は美しくつながっていけるのでしょう。

好きと嫌いは紙一重

大嫌いの原理も大好きの法則さえも

まったく逆なんて却って貴重です

結果倍/自乗倍網羅し両者の情動を

分かち合いたい 覚えていたいです

作詞:椎名林檎

「嫌い」の反対は「好き」ではないですよね。

気になっているからこそ憎いとか、憧れてるからこそ妬んでしまうとか、「好き」に近いからこその「嫌い」もあります。

そうやって相手にたいする”情動”(好きか嫌いかに関わらず)を大事にしたいよね、と解釈しました。

価値観を捕まえて変わっていく

だって私たちは生きている

脅威を吸い込んでいま

本音と建前とを一緒くたに

人生に保証はないもの

欲していたいよ万事を恋い慕いたい

必要火急です

早よう捕まえさせて

いつも変わっていきたい

作詞:椎名林檎

「本音」と「建て前」は、先ほどの好きと嫌いに繋がってきます。

「嫌い」が建前だけど、本音は「好き、こうなりたい」だったりする。

だから「これは嫌い」と表面的に湧いてきた感情だけで避けてしまうのではなく、全て「欲してみる」のが一番いいのかもしれない。

この「必要火急」は「不要不急」に対抗した言葉でしょうか。

全てのものを欲し、受け入れることは必要であり、急ぎであります。

今この瞬間にも、時代が悪くて受け入れられない価値観もあるかもしれない。

同性愛に関してもそうですよね。

今の若い世代はあまり抵抗がないものの、まだまだ政治家の方々には拒否されてしまうみたいな。

まだ受け入れられていない価値観をちゃんと「捕まえ」て、時代は「変わって」いかなきゃいけない。

最初から最後まで、人類愛的な、大きな愛を感じさせる歌詞でした。

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