【歌詞考察】Creepy Nuts「犬も食わない」-慣用句の皮肉とフレーズの意味を解説

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『犬も食わない』はミニアルバム「よふかしのうた」に収録されている楽曲。

犬同士の喧嘩と人間の”犬も食わない”言い争いの言葉遊びが絶妙です!

ただ、さまざまな慣用句やことわざを知っている前提で歌詞が進んでいくので、その言葉を知らないと気付けない部分もあるかと思います。

今回はそんな言葉を解説しながら、歌詞の全体像を考察していきます!

似たもの同士の喧嘩

俺ら似たもん同士

やっぱどっちもどっち

指差し笑い合う鏡越し

いつもの話

作詞:R-指定

「俺ら」は犬と人間のことでしょう。

また、喧嘩相手同士のことでもあります。

「鏡越し」ということは、結局お互いにハタから見たら同じような者同士ってことですね。

他人をバカにするということ

人を呪わば穴二つ

人を笑わば節穴二つ

「お前がな」「お前もな」

そりゃ犬も食わない

作詞:R-指定

人を呪わば穴二つ:誰かを呪えば、自分も呪われるということ。

節穴は「お前の目は節穴か?」などとバカにするときによく使われますが、これは「お前見る目ねぇな」ってことです。

人を笑う=バカにするってことは、結局物事を表面でしか判断できてないからだろ?という意味でしょう。

ちなみに”犬も食わない”とは、程度の低い喧嘩のこと。

何でも拾い食いするような犬ですら食べないくらい、どうでもいい喧嘩ってことです。

…そもそもその言い回し自体が犬をバカにした前提があるんですよね。

この歌詞を読んでいくと、人間同士の喧嘩は人間がバカにしている犬にすらバカにされていることが分かります。

ディーオーダブルジー

I’m a dogg

作詞:R-指定

dogg(ディーオーダブルジー)は「仲間」という意味のスラングと、犬という意味のdogをかけています。アーティストのSnoop Doggも関係あるのかな?

ちなみにネットスラングで犬のことイッヌって言うじゃないですか。

あれ、英語でもDogのことDoggo(ドッゴ)っていうんですよ。

飼いならされた犬

俺らって昔から人たらし

この首輪の件なら気にしない

俺だって君らといると楽しい

作詞:R-指定

「昔から」ということですが、歴史の教科書でも犬と人間が共存してきた歴史は見て取れます。

「ペットは家族」と言えども犬には首輪を付けますよね。

でもそれは気にしないよ!仲良くやろう!ってことです。

イッヌ、飼いならされてますね~。

本当に人>犬?

主従関係?いやどうだろう?

小さいのは君らの脳かも

だって先祖代々見て来たよ

君ら人間様の右往左往

作詞:R-指定

「犬の飼い方」的な本にはよく
「犬には飼い主が主、犬が従という関係を分からせましょう」
みたいなことが書いてあります。

でもそれは人間目線の話であって、犬は賢く「従ってるフリ」してるだけかもしれないですよね。

歴史の教科書に載るような人物のなかでも、犬を愛したとされる人物はたくさんいます。

そんな偉い人たちの失敗やら恥ずかしい場面やらを犬は知ってるということですね。

犬好きが高じて後に悪法と言われる「生類憐みの令」を出した徳川家光がいい例かもしれません…。

おじいは縁側に寝っ転がって

オトンはテレビの真ん前に座って

俺は今君の膝の上

君の手のひらにある画面を眺めてる

作詞:R-指定

犬は飼い主である「君」の膝に座って、「君」のいじるスマホを見ています。

あ、ニヤっとしただろ?

あれあれ?舌打ちが聞こえたよ?

いや、その呟きは地雷かも

気分転換に散歩はどうだろう?

作詞:R-指定

動画を見てニヤける場面も、
ゲームで負けて舌打ちするところも、
誰かを怒らせるようなツイートをしているところも、
恥ずかしいところ全部犬は見てるってことですね。

人間がバカにしている犬にこんなに弱みを握られて、果たして本当に人間>犬という力関係は正しいのか…と考えさせられます。

「気分転換」と称して犬のしたいことに付き合わされているようにも感じます。

体やから

いつもわざとすれ違う男だ

俺をダシに弾ませてる会話

今度ウチにくる?別にいいが

俺の目の前でおっぱじめんな

作詞:R-指定

散歩のシーンです。

男は「犬かわいいね~」とか言って、飼い主である「君」と距離を近付けています。

「おっぱじめる」は基本的に…性の営みのことですかね。

は?おい、コラ何見てんだ?

汚ねぇ野良風情が話しかけんな

うつるうつるその病原菌が

ゴメンゴメン

体やから体…

コイツらこうゆうの好きやから…

作詞:R-指定

散歩中、野良犬に喧嘩を売る場面。

体(てい)とは、ここでは「お約束の行動」のことです。

野良犬に喧嘩を売ると「こら~」と構ってもらえる!と学習した犬。

本気で喧嘩を挑んだのではなくあくまで飼い主を楽しませるためにやってると強がっています。

でもたぶん本当は野良犬に吠え返されてビビったのでしょうけども。

野良犬と飼い犬、メジャーとインデーズ

ヘイブラザー!

俺ら誇り高き野良

人間どもの支配下はヤダ

ヘイブラザー!

俺ら生まれつき野良

首輪のアレとは一緒にすな

人間を盾にイキがって

噛みつこ思たら謝って

耳元でそーゆー体やって

ヤツ曰くそれが可愛いんやって

作詞:R-指定

野良犬目線の歌詞になりました。

ここで、「飼い犬」と「野良犬」は音楽界の「インディーズ」と「メジャー」の構図に似ていることに気が付きました。

一般的に「メジャー」のアーティストはインディーズよりも世間への露出が多いです。

ただその分、世間の需要に応えるような音楽を作らなきゃいけないイメージがあったりもします。

そんなメジャーアーティストを「首輪に繋がれた犬」に例えて、「野良犬=インディーズアーティスト」が吠えている場面だと解釈しました。

噛みつかれそうになって謝るのは、有名人が炎上したときにすぐ謝ることの皮肉にも聞こえます。

今やメジャーのアーティストであるCreepy Nutsですが、メジャーに吠えるインディーズアーティストの気持ちも分かるし、吠えられるメジャーの気持ちも分かるからこそ書ける歌詞ですね。

人間は犬より野蛮

確かに人間は争いが好き

見るのもやるのも辞められない

安全な場所から見守ってたり

石投げたりヤジ飛ばしたり

特にそれが自分より劣ってる者同士なら尚嬉しい

焚き付けなだめて煽って裁いて関係ねぇ関係ねぇて指さし笑ってる

作詞:R-指定

ラップバトルやスポーツ観戦なんかもそうですよね。

歴史をさかのぼれば、奴隷同士や猛獣同士を殺し合わせたりもしていました。

それが大衆的な娯楽として成立してたくらいです。

しかもアイツら最近さ

口喧嘩を審査してる深夜

作詞:R-指定

これはフリースタイルダンジョンのことですね。

今は放送終了してしまいましたが、2020年まで放送していた深夜のラップバトルの番組です。

コッチじゃ弱い犬ほどって言うけど

アッチは吠えりゃ吠えるほど良いんだ

作詞:R-指定

「コッチ」は犬の世界。というか犬の慣用句。

「弱い犬ほどよく吠える」という慣用句を元にしたフレーズです。

で、犬は弱いほどよく吠える(=喧嘩を売ったり悪口を言ったり)のに対し、「アッチ」つまり人間はよく吠える(=ラップで相手を言い負かしたり)ほうが勝ち

そんな野蛮なヤツらに

とり入るため犬が猿芝居

アホを喜ばすためアホのフリ

腹でバカにしてても首輪付き

作詞:R-指定

強いほどよく吠えるって、確かに野蛮だ…。

「犬猿の仲」という慣用句と「猿芝居」をかけて、猿の喧嘩仲間である犬が”猿芝居”するという言葉遊びがめっちゃ面白いです。

また、「腹黒い」「腹の底を見抜かれる」と言うように、「腹」は良くない感情が湧き上がるようなイメージのある言葉です。

で、その強がりな「腹」に対して「首」

バカにしつつも、人間に支配された証が付いちゃってるのです。

…なんでお前そんなん知ってんねん?

作詞:R-指定

これは「君」から野良犬に対して。

野良犬がなんでそんな人間に飼育された犬の事情を知ってるんだという疑問です。たしかに。

そしてそれに加え、メジャーアーティストからインディーズアーティストに対して言ってる場面でもありそうです。

メジャーアーティストを「首輪付き」呼ばわりしつつも、内情に詳しい。

実はメジャーに憧れがあるんじゃないの?という皮肉にも聞こえます。

最後は犬>人

ヘイブラザーお前今何つった?

ヘイブラザー何か文句あっか?

ヘイ野良 お前らやってんなー!

ヘイブラザーブラザーブラザー

ヘイブラザーそこは俺のシマ

ヘイブラザーそれは俺のエサ

ヘイブラザーそれ俺の女な

やい野良野良野良ww

もうやめとけ!

人間みたいな事すな、恥ずかしい…

作詞:R-指定

まさに犬も食わない喧嘩…。

犬同士の喧嘩に「人間みたいな事すな」とは、またも皮肉が効いてます。

先述の通り、「犬も食わない」という言葉の裏には無意識に犬への見下しがあります。

でもこの「犬も食わない」ようなしょーもない喧嘩をするのは人間。

犬に対して「人間みたいなアホなことすな」という発言の裏には、人間がしょーもないものであるという前提があります。

…という皮肉。

犬という慣用句やことわざは、「野蛮で無知ですぐ吠えて人間様に飼われている」という背景のもとに作られたものが多いです。

でも、犬からしてみたら人間の喧嘩のがアホらしくて野蛮なのかもしれませんし、そもそも人間は犬に見下されてるのかもしれません。

…というのと、音楽界のアングラか売れ線かみたいな言い争いの皮肉も混じっていて、とても聴き応えのある歌詞になっています。

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