松本隆さん作詞の曲と言えば、何を思い浮かべますか?
この曲がリリースされたのは1985年。
私はまだ生まれてません。
でも20代にも広くこの曲が知られている理由はドラマ「電車男」でしょうね。
私もそれきっかけです。
「Romanticが止まらない」は、状況があまり詳しくは書かれていない上に、「大人の恋愛感覚」で描かれているため、解釈が難しかったです。
一応私も「大人」の年齢ですし、それなりに「大人の恋愛」もしてきたので、私なりに解釈をしていきたいと思います。
遊び慣れた男女
1番冒頭。
キスの途中に指先で首飾りを外すなんて、慣れたものですよね。
そして私の大好きな表現がこちら。
友だちの領域からはみだした君の青いハイヒール
作詞:松本隆
なんておしゃれな表現…!
青いハイヒールという具体的なモチーフを出しておきながら、はみ出すのは「友だちの領域」という、概念。
軽いキスでは済まないのが容易に想像できます。
「キス」「指先」「ハイヒール」のワードの羅列も、もう熱々な2人の姿しか思い浮かばないですね。
「君」が友だちの領域からはみ出したのですから、ネックレスを外したのもおそらく「君」、つまり一般的に考えると女性の方です。
「こういう遊びに慣れている」と読むこともできますが、男性との壁を取っ払って「戦闘モード」に入ったというような読み方もできますね。
いつ、どこで、という描写が一切ありませんが、場所なんてこの曲ではどうでもいいんです。
熱々な2人だけが1番では歌われてます。
ハイヒールというと黒や赤のイメージですが、ここでは珍しく青。
寂しさを感じるこの色の表現が後の伏線になってます。
サビのネガティブなワード
サビの、
- 「止めて」
- 「苦しくなる」
- 「溺れて」
というネガティブなワードは、返って友だちでは居られなくなる高揚感が伺えます。
ただ、
- 「惑う瞳」
- 「せつなさ」
というワードにはそのままの意味、つまり戸惑いや切なさ寂しさが漂います。
「惑う」ということは、女性も戸惑っていたのでしょうか。
いやいや、さっき自ら一線を越えてましたから、空気を盛り上げるためのこなれた演出かもしれませんよ…。
ここも恐らく2番への伏線ですね。
壁のラジオ絞って
やっと場所が出てきました。
壁にラジオが付いてる場所なんてホテルくらいです。
…と思ってますが、80年代はそんなことなかったのでしょうか?
この「遊びなの」が、さっきから漂ってた寂しさに繋がりますね。
友だちの領域を超えて恋人になってもいいのか?
友だちの領域を超えても恋人になれないのでは?
そんな女性の切ない胸の内が見えてきそうです。
が、
「遊びなの」と聞くってことは、「違うよ」と言わせたいのかな?と意地悪な見方もできてしまいます。
言葉では答えない
そして結局その返事が
- 言葉では答えない
- 抱いた手に力こめる
たしかに、「遊びなの?」って聞いて「違うよ」なんて言われても信じないだろうし、第一野暮ですよね。
…とはいえ、YesともNoとも答えないというところが、読めないですね。
男性は安心させるために力をこめて抱きしめたのかもしれないし、「違うよ」と言うとウソになるから言葉にしなかったのかもしれないし…。
…と、女性なら不安になってしまいます。
男性も男性で、遊び慣れていそうですね。
同じ孤独を抱いて生きたね
同じ孤独。
ここはきっといろんな解釈があるでしょうが、
- お互い切なさを感じていた
- 「同じ孤独」をわかり合っている
という点から元々恋人の相談をし合う仲だったのではと推測してます。
一人では眠れないというのも、
「もう一人と一人には戻りたくない」
という切ない心情と、
「一緒に寝るでしょう?」
という情熱的な情景が含まれているように感じます。
走る涙に背中押されて
ラストで一気に悲しい表現。
序盤から散りばめられた切なさの漂着地点のような表現。
さっきとはちがう胸の苦しさに感じます。
ここでの、涙に背中を押された「せつなさ」ってなんでしょう。
友だちではなくなることへの幸せな切なさか、はたまた、2人はこのあと結ばれなかったのか。
あんなに燃え上がって最後まで「Hold me tight(強く抱きしめて)」なんて言ってるし、でも実際に涙を流しているし…。
ここは人によって解釈が分かれるところでしょう。
ロックバンドといえばメンバーによる作詞作曲が主流。
しかしこの曲はなんと松本隆×筒美京平の最強コンビによる楽曲提供です。
メンバーが作詞をすることでバンド自体に世界観が生まれます。
しかしプロの作詞家作曲家が曲を手がけることでアイドルのように幅広い層に親しまれる楽曲になりますね。
特に松本隆さんの歌詞の世界はいつ聴いても心に美しい情景が広がるものが多いです。
最近の曲だと、ランカリーの星間飛行や、中川翔子の綺麗ア・ラ・モードなんかもそうですね。
若い子にもぜひ松本隆さんの歌詞の世界に浸ってみてほしいです。