【歌詞考察】Creepy Nuts『バレる!』‐過去の曲と照らし合わせて考察してみた!

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新曲『バレる!』に似たCreepy Nutsの楽曲があった?

2021年一発目のCreepy Nutsの新曲『バレる!』。

『板の上の魔物』という2019年に発表された曲は、『べしゃり暮らし』という漫才を題材にしたドラマの主題歌です。漫才とラップという、「板=ステージ」の上の表現者を描いた歌詞でした。

そして新曲『バレる!』もそれに似た雰囲気の歌詞になっています。

というのも、『バレる!』は2021年のR-1グランプリのテーマ曲なんです。

そしてこの曲も、ある業界の中でのし上がっていく”表現者”が軸の歌詞となっています。

のし上がってゆく表現者

未踏の地まで来た元”中堅”

wow yeah ちょっと待て何これ知らねー曲がり角

wow yeah どこにも見当たらない他人の足跡

『バレる!』作詞:R-指定

今までは誰かの真似だったり、誰かの作った「足跡=成功戦略」みたいなものをたどってきたのでしょう。

それが、誰の真似でもないオリジナルの境地まで来たんですね。

上でつっかえる人もいなくなり、自分が崇められる立場になった。

『板の上の魔物』では追いかけられる立場でもあり、追いかける立場でもありました。

歌詞の言葉で言えば”中堅”だったんですよね。

それが今回の『バレる!』では、誰かを追いかけるわけではなく自分で道を切り開いていく立場になった。

この変化が、テレビでも毎週複数回お見掛けするような売れっ子Creepy Nutsの様子を彷彿とさせます。

次の成功者

胸の高鳴り抑え送り込む肺に酸素

また増える灰色の珊瑚礁

アイデアの百鬼夜行

『バレる!』作詞:R-指定

深呼吸…と見せかけて、環境に悪い事をしてます。

作詞をしたR‐指定さん(通称Rさん)はヘビースモーカーです。

灰色の珊瑚礁は、タバコで汚れたボロボロの肺のことだと解釈しました。

アイデアの百鬼夜行…薬やってる?

それだけどんどんアイデアが湧いてくるという比喩だとは思いますが。

あともしかしたら『バレる!』に似た歌詞の『板の上の”魔物”』にかけて、「鬼」なのかなーとも。

Who’s Next?

次は誰が描き出す画期的な自画像

『バレる!』作詞:R-指定

お笑いにしろラップにしろ、自分の声や身体で表現をしますよね。

そのことを『自画像』という言葉で表現しています。

でもそれは誰かの真似では誰も面白がってはくれない。

画期的”でなければいけないんです。

だから誰かの作った道を辿ることなく、『知らねー曲がり角』にぶち当たらざるを得ないんですね。

『次は誰が』というフレーズから、「成功者」「人気者」「流行」が目まぐるしく変わる業界の様子がチラ見えします。

”蓄えた力”というワード

数千の屍かき分け誰もが血眼

上も下もパンパンな末期的な地下牢

から彗星の如く現れ見せつける蓄えた力を

『バレる!』作詞:R-指定

表現者の世界は、憧れる人は多くても売れる人はたった一握り。

多くは『屍』になってしまいます。

上も下も』というのは、実力のことです。

自分より下手なヤツ=下をいっぱい踏み越えてここまできた。

それでも自分より売れてる人たち=上もまだまだいるんですよね。

で、そんな大勢の中で見せつける『蓄えた力』。

ここは「画期的な流行」とか「突飛な芸」とかではないとこがCreepy Nutsらしいです。

『かつて天才だった俺たちへ』のサビが好きなんですが、まさにこのフレーズ通り。

俺ら大器晩成

時が来たらかませ

『かつて天才だった俺たちへ』作詞:R‐指定

過去に歌詞の元ネタ考察もしています。

「たまたまバズった!」とか「デビュー間もなくブレイク!」とかじゃないんですよ、彼らは。

チャンスが来たら実力を出せるように、虎視眈々と芸を磨いてきた。

チャンスをがっつり掴んで、蓄えた実力を発揮したことで成功した。

そしてそれを自覚している。

だからこそ見せつけてやるのは『蓄えた力』だと。

あーーそういうとこがかっこいいんですわ…。

”埋まらねえ上との差”が…

錆びついたあの老ぼれ

邪魔なんじゃそこどいとけ

白線の内側へ

I’m a 百戦錬磨の呼び声

『バレる!』作詞:R‐指定

先ほどの『上も下も』の”上”に盾突く場面。

『板の上の魔物』では
『埋まらねえ上との差』
だったのに、ものの1年半で『邪魔なんじゃ』と言えるくらいまで来たんですね。

『白線の内側』というフレーズはもっぱら駅のホームで聞くものですよね。

白線が隔てるものは
「進んでいく電車」

「立って待っている人」。

『彗星の如く』現れて力を見せつけ新しい流行を生み出す若者にケチ付けてないで、老いぼれは大人しく”白線の内側”で突っ立ってな、という風にも聞こえます。

作詞は”実験”

wow yeah エゲつないもん発明したのかも…

生中継!革命前夜換気扇下のラボ

『バレる!』作詞:R‐指定

芸人さんだったらネタ、ラッパーだったらフレーズやリリックを思いついた、そんな瞬間。

『換気扇下』はタバコを吸ってるシーンですね。

『革命前夜』、つまり明日、自分のそのアイデアでブレイクしちゃうかも!みたいな。

R-1前夜の芸人さんにとってはまさに「明日の生中継でブレイクしちゃうかも…」という心情なのかもしれませんね。

『ラボ』という言葉で思い出すのは『ぬえの鳴く夜は』のMV。

Creepy Nuts / ぬえの鳴く夜は【MV】

あとはRさんのアルバム『セカンドオピニオン』に収録された『Dr.strangelab』という楽曲です。

Rさんにとってリリック制作は実験のようなものなのでしょうか。

でも確かに、Rさんの歌詞は聴けば聴くほど驚きや感動が多くて、音と言葉と韻を混ぜた化学実験だと言われても大げさではない気もしますね…。

才能がバレる!

バレる!

この俺の天賦の才が

バレる!

マジこれ面倒臭いな…笑

バレる!

バレる…

世の中に気づかれる…

『バレる!』作詞:R‐指定

自分の才能がバレることで、今日までの生活が一変しちゃうかもしれない。

売れたら売れたで面倒くさい。

いやー困っちゃうな。

まぁそんなこと言って!売れたいくせにな!

吠え面かけAll My Haters

とりあえずワビ入れて

ほれ見たことか!ニヤける

『バレる!』作詞:R‐指定

Hatersは直訳すると「(自分のことを)嫌っている人」つまりアンチですね。

自分の才能が世間に認められることで、アンチさえもその才能を受け入れざるを得ません

持ち上げられた表現者

才能がバレた怖さ

wow yeah 拍手と歓声ここ陽の当たる場所

沈着冷静、地に足つけたまま「ありがとう」

地位名誉名声は水物かつパンドラの箱って

頭で分かっちゃいるくせに身体が麻痺してくミステリー

『バレる!』作詞:R‐指定

結果が出たようです。よかったですね。

R-1で言えば「優勝した」とか、そんなシーンです。

先ほどの『末期的な地下牢』から世界は一変、『陽の当たる場所』になりました。

R-1のようにテレビで大きく取り上げられるような大会で優勝すると、お金以外でも生活がガラッと変わるらしいですね。

ヘアメイクさんが付いたり、スタッフさんがみんな頭を下げて来たり、楽屋が広くなったり…とにかく大きく待遇が変わるそうです。

そんなに環境が変わったら、そりゃ身体も感覚も麻痺していきますよね。

「優勝して待遇が良くなっても、今だけだから調子乗らないようにしよう」

なんて思っても、人間は良くも悪くも順応してしまう生き物。

そんな好待遇に慣れちゃう怖さが、天賦の才がバレることの怖さでもあります。

叩かれ埃が出る

叩きゃホコリに身から錆生き馬の目を抜くイス取りゲーム

たった一度のミスが命取り

皆掌返しなら一斉に

『バレる!』作詞:R‐指定

慣用句パレード!Rさんらしいです。一つ一つ解説します。

  • 叩けば埃が出る:凄そうに見える人でも、実は欠点があるということ。
  • 身から出た錆:自業自得で損をすること。
  • 生き馬の目を抜く:(この歌詞では)他人を出し抜いて自分が得をすること。

優勝して「有名人!」「人気者!」になればなるほど、世間のイメージが勝手に作られますよね。

そして例え悪い事をしてなくても、今まで許されてた欠点が露呈するだけで「そんな人だと思わなかった!」と言われちゃうこともあります。

しかも有名になればなるほど、叩いてくる人も自ずと増えるから埃や錆なんて簡単に出てくるわけですよね。

「叩けば埃が出る」という慣用句の「叩く」と、ネットなどで批判する意味の「叩く」をかけています。

ボロボロになっていく”身体”

白、黒、つけれない…もう捨身じゃいられない…

やっぱ失うモノが惜しい…

放心、保身、本心?oh shit!

『バレる!』作詞:R‐指定

『捨身』も「命を捨ててもいいくらい熱心になる」という意味で慣用句的に使われることが多いです。

ここではそんな慣用句的な意味と、文字通り「身を捨てる」意味も含まれています。

先ほどの慣用句は「叩く」「身から出た」「目を抜く」など、身体がボロボロになっていくようなイメージのものばかりでした。

慣用句はいわば「たとえ」ですが、もはやたとえどころではなく本当に身体がボロボロになりそうな印象を受けます。

身体を捨てても良いくらい熱心に取り組んできたけど、いざ本当に身体がなくなる!と思うと怖くなってしまった。

ここでいう身体は実際の身体だけでなく、アイデンティティといった概念も含めての自分を指します。

自分を失った表現者

自分がなくなっていく

俺を分かってくれと叫び

世に知らしめたばかりに

自分で自分をより自分らしく演じなきゃいけない羽目に

『バレる!』作詞:R‐指定

『捨て身』で自分を表現した結果、表現した自分だけが過大に評価されてしまった。

『サントラ』という楽曲でも

自分を正当化する仕事

自分を過大評価する仕事

『サントラ』作詞:R‐指定

という歌詞がありました。

過大評価されているから、その世間の評価に合わせざるを得ないという意味もあったのでしょう。

”本当の自分”を隠し、世間から見られる”自分らしさ”を演じなきゃいけなくなってしまったというジレンマ。

私は他のアーティストさんのラジオも聴いたりするのですが、こういうジレンマは表現者にとってあるあるみたいです。

R-1グランプリではありませんが、芸人のぺこぱさんも「優しいツッコミ」のイメージが大きくなりすぎて、視聴者が少しでも気に食わないセリフが出たりすると「ガッカリしました…」などと言われることもあるみたいで。まさにこのことですね。

求められる自分、本当の自分

求められてるあの味

でも俺はもうそこにゃ居ない

俺って誰?俺って何?

びびって手も足もでないです!

『バレる!』作詞:R‐指定

自分のキャラが一人歩きし、世間からそのキャラを求められることになってしまいました。

「こうしたらウケるかな」

「こんなことしたらキャラに合わないな」

そんな振る舞いをするうちにアイデンティティが分からなくなってしまったというシーンです。

先ほどの『捨て身』という身体に関する慣用句に対し、『手も足も出ない』とこちらも身体に関するもの。

Rさんの歌詞はこういう遊び心が聴いてて面白いですよね!

本当に”自分”を失った

バレる!

俺にはもう何にもないや

バレる!

いやハナから勘違いだった

バレる!

バレる…

化けの皮剥がされる…

『バレる!』作詞:R‐指定

そしてサビでも『ハナ=鼻』『皮』とまた身体に関する語句が出てきます。

チヤホヤされていたのは「俺」自身に対してではなく、”実績”や「俺」が被った”キャラクター”でしかないことに気付きました。

水を得たAll My Haters

手を叩いて指さしてる

ほれ見たことか!笑える…

『バレる!』作詞:R‐指定

1番のサビでは

才能が認められた「俺」

vs

悔しがるアンチ

という構図だったのが、一変して

化けの皮が剝がれた「俺」

vs

自分の批判が正当化されたアンチ

という構図になっています。

この部分はCreepy Nutsの楽曲『未来予想図』のこの部分を彷彿とさせますね。

鬼の首を取ったように

「ほら言わんこっちゃない」

「こうなると思ってた」

「初めからわかってた」

したり顔のヘイター皆 水を得た魚

『未来予想図』作詞:R-指定

ヘイターや水を得た魚というワードも同じですが、「売れっ子が落ち目になる」という状況も同じです。

終始ネガティブな歌詞である『未来予想図』が悪い意味で叶ってしまった状態が、このシーンなのかもしれません。

落ちていく…?表現者

勝者のままじゃいられない

生きてる限りは勝ち逃げできねーな

衰え錆びつきどかされてしまう運命か…

メッキを剥いだのは寝首をかいたのは

あの日の俺とよく似た目をしたヤツでした

『バレる!』作詞:R-指定

結局成功しても、”昔の自分”のような『血眼』の若手に蹴落とされたり、『彗星の如く現れ』た若手に地位を奪われたりしてしまいます。

勝者のまま、成功者のまま、ではいられないのが現実です。

そうでなくても時代は変わり、ウケるものが変わっていきます。

流行の中心だった人も、いずれは「古い」「流行おくれ」「一発屋」になってしまいますからね。

一生懸命磨いた芸も技術も『衰え』る時が来るし、『錆び』ついてしまう。

見下してきたあの『老いぼれ』のように。

まだ諦めるわけにはいかない

生憎、俺はまだ渡らねぇ三途の川

今日もまた積み上げては蹴飛ばされる賽の河原

『バレる!』作詞:R-指定

『三途の川』は、死者が死後の世界に行くために渡る川です。

『賽の河原』は、子どもの死者が石を積む刑を課せられている河原です。

石を積んでも積んでも鬼に蹴られてなかなか積み終わらないという逸話から、「無駄な苦労」という意味合いでよく使われています。

それを踏まえてこの部分を解釈すると

どれだけ他人に蹴落とされようと俺は諦めねえ!

ということになります。

ところで、三途の川と賽の河原で韻が踏めるということに、昔の人は気付いていたのでしょうか。

【2021/5/15追記】

お恥ずかしながら、『バレる!』が話題になるまで私が知らなかった楽曲なのですが、テークエムさんの『それじゃ無理 feat. R-指定, NORIKIYO & AKLO』に

三途の川のほとり スーサイドスクワッド
賽(さい)の河原で順番に待つ

『それじゃ無理 feat. R-指定, NORIKIYO & AKLO』作詞:テークエム・R-指定・NORIKIYO・AKLO

という歌詞があるのだそうで。

自分で気づいたわけではないので、「私の考察」であるこの記事には載せてなかったのですが、コメントを受けて掲載します(ありがとうございます!)。

三度顔上げたニヤリとほほえんだ

懐忍ばせた刀と新たな引き出しが

『バレる!』作詞:R-指定

『彗星の如く現れ』、『天賦の才がバレ』て、そして落ち目…

かと思いきや、隠し持っていた刀で3度目の逆襲。

刀は錆びていなかったんですね。

そして『新たな引き出し』。

前と同じことをしても、再ブレイクは果たせませんからね。

『未来予想図』のようにならないための手段を、Creepy Nutsはこの数年間で身をもって学んだのかもしれません。

最後に

Creepy Nutsファンであることを見せびらかしながらCreepy Nutsの過去の曲と照らし合わせながら、『バレる!』の歌詞考察をしていきました。

タイアップでも思いっきりCreepy Nutsらしさをぶつけるところが大好きです。

しかもタイアップ先にも合ってるし。

このブログで何度も言ってますが、R-指定様の歌詞は本当に天才的です。

サラッと聴いても意味は分かるし、じっくり読めば生き様も読み取れるし、言葉遊びも巧みだし。

ぜひ令和の六歌仙を選ぶ際はノミネートしていただきたいです。

コメント

  1. まるもこ より:

    「三途の川」「賽の河原」
    この辺はそれじゃ無理のセルフサンプリングな気がします

    • somedaytsuka より:

      まるもこさん、コメントありがとうございます!実はそれも人から聞いて知っていたのですが、もともと知ってた曲というわけではないので敢えて書きませんでした。…ただ、過去の曲と照らし合わせてと謳ってる以上触れないのも不自然でしたね。追記します。ありがとうございます!

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