【歌詞考察】KinKi Kids「テノヒラ」-美しい情景で彩る『日常系ラブソング』

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『Fアルバム』のトリ前を飾る切ない楽曲、『テノヒラ』。私の大好きな歌詞の一つなのですが、作詞は浅田信一さんです。本当にいい歌詞書きますよね。

キンキだと、他にも「永遠のBLOODS」「月光」「真冬のパンセ」等、ファンからの人気も高い曲を多く作詞されています。


「真冬のパンセ」なんかは どんなもんヤ!(KinKiKidsのラジオ)で 光一さんが「これでいいや」と 流しがちのイメージ…。

そんな浅田さんの歌詞でも、私が一番好きなのが「テノヒラ」です。
おそらくラブソングなんですけど、「ラブラブで幸せ~♡」とか「初恋でドキドキ☆」というよりも、あっさり平凡な「日常系」といった感じです。

情景は平凡なんですが、かえって

こんな普通で、複雑で、言葉にしがたい感情を歌詞にできるんですか!?

と驚いてしまいました。

単純に好き!幸せ!と言えない不安なども入り混じったような薄味の大人の関係性が、「影」「眩暈」といったモチーフで鮮やかに描かれた、映画のワンシーンのような歌詞です。


こんな歌詞が書きたい…!

この映画のような歌詞を、ステキなフレーズを手に取りながら考察していきます。

1番

Aメロ

汗ばむくらいに強く握る 不揃いの手のひらを重ねる時
通りすぎるあの日の匂いが立昇る

作詞:浅田信一

のっけからもう切ない…。ていうか、


汗ばむくらいって、結構強いし、長い。


不揃いという点で大きさの違う男と女の手というのは想像がつきますが、敢えて「不揃い」という少しネガティブな言葉を使うことで、その後の「通りすぎる」がより切なく聞こえます。

あの日というのはこの後も具体的には言及されていません。


私は「出会った日」「付き合い始めの日々」なのかな、と解釈しました。

不揃いなすれ違った「僕」と「君」の状況を憂い、出会った頃を思い出して初心に帰って感傷に浸っている場面でしょう。

しらけた公園のベンチに座る

頼りなく寄り添った僕等の影

涙もろく強がりな君を守るのがやっとだった

作詞:浅田信一

ここ!好きすぎてあらゆる場面で使ってました。
(LINEの「ひとこと」やSNSのプロフィール)

「しらけた公園」「頼りなく」「影」がもう不穏というか、主人公の不安が感じられます。

「涙もろい」「強がり」。一見、真逆のようですが、どちらにせよ本当に強いわけではないんですよね。


強く見せようとしている「君」


結局その強がりも決壊して涙を流してしまう「君」

そんな「君」を守るのがやっとだったと言っていますが、強がりを見抜いているのは長年連れ添って「君」と向き合ってきた証拠ではありませんか!
さらに、守ろうとしてくれるなんて、最高ですよ。

…というリスナーの声は「僕」に届くはずもなく。「君」との関係性への不安は拭いきれないようです。

Bメロ

淀んだ水に揺れる波紋のように
遠くどこまでも行けたなら

作詞:浅田信一

浅田さんはKinKiKidsに「ウタカタ」という曲も提供したのですが、「淀んだ水」とか「ウタカタ」とか、方丈記みたいですね。あと、テノヒラもウタカタもカタカナ4字だし、カタカナ4字がどちらにもちょこちょこ出てきますね。


また、「ウタカタ」の歌詞も「テノヒラ」に通ずる部分があります。
(過ぎ去る日々、重なる指、雨…)

遠くどこまでも」の例えに「波紋」って。おしゃれな表現~~!

そのうち僕等きっと壊れてしまいそうで
声にならぬ想いにも気付いてる

作詞:浅田信一

波紋はまっすぐスーッと同じリズムで進みますよね。でも、このままいくと「僕ら壊れてしまいそう」。
つまり、今のままでは二人はいっしょには居られないということでしょう。

で、二人の間に何があるのかというと、「声にならぬ想い」。
この声にならないというフレーズには、ここでは2つの意味があると思います。

  • 言葉にできないほど複雑な想い
  • 言葉にしてしまうと「君」を傷つけてしまう想い

ざっくり言ってしまえば
別れるべきか、別れないべきか、分からない
ということです。
好きだけど、単純に情が湧いているだけかもしれない、とかね。

付き合ってる相手に

別れるか別れないか迷ってるんだけど…

なんて言えませんよね。
言うとしたら、もっと「別れる」という意思が固まってからだと思います。

君を守るのがやっと」で、自分の気持ちは声に出せていない。
声に出したら二人の関係は壊れてしまいそうだから。
という状況です。

つまり「僕」は、どうしても「君」とのポジティブな未来を描けていないのだということがここまでで分かりました。

サビ

眩暈にすら似た 愛しさの狭間で
身体にタマシイに 切なさが押し寄せる

作詞:浅田信一

優しいメロディと歌声。

さらに「重なるテノヒラ」「同じ空気」などの幸せな恋愛を思わせるフレーズがあり、一見すると緩やかな愛情を歌ったサビのように思えます。

しかしよく聴いてみると、

「眩暈」

「愛しさの狭間」

「切なさが押し寄せる」

これらの表現が、二人の関係の危うさを匂わせます。

「愛しさの”狭間”」ってことは、愛しさの”どまんなか”ではないってことです。

愛しさと愛しさの”間”。

私は谷底をイメージしましたが、その谷底に「切なさ」が押し寄せている。

つまり、「僕」はもう愛に冷めてきている部分もあり、でもやっぱり愛しいと思うこともある。
そんな「愛しさの狭間」で揺らいでいるのです。

まっすぐに胸を張って愛していると思えない
そんな切なさでしょう。

同じ空気を 感じることや
ぎこちないオヤスミや 重なる手のひらが
心に染みわたるように 二人に残りますように

作詞:浅田信一

二人に残りますように

というフレーズは、一般的には切なさを想起させる言葉ではないですよね。

でも、先ほどの「愛しさの狭間」で揺れている「僕」がいることを考えると、

消えて無くなってしまいそうな二人の愛が、どうか無くならず残りますように

と必死であらがっているようにも見えます。

そんなに必死に願うしかないくらい冷めてるなら、別れればいいのに…
なんて思ってしまいますが、それは外野の意見。
きっと複雑な事情や、本人ですら正体の分からない感情で揺れているのでしょう。

2番

Aメロ

見慣れた景色も違って映る

清らかな春の風

夏の大空

秋の夕暮れ

伸びてゆく影に冬の足音を聞いた

作詞:浅田信一


aikoの「カブトムシ」にも1フレーズ丸々使って四季を表して時間の長さを物語る歌詞があります。

こういった時間の表現が、私は大好きです。

これら四季の光景に対して「見慣れた景色」と言っています。この表現から「君」との付き合いが年単位で長いことが分かります。

でもその「見慣れた景色」が「違って映る」ということは、「僕」の心情の変化があるということですね。

そして迫りくる冬。
冬は一般的には「寒い」「暗い」といったマイナスイメージのある季節です。
歌詞でモチーフとして使われるときは特に。
さて、どのように続くのでしょうか。

Bメロ

凍てつく道に咲いた花のように

そっとそよ風を待ち焦がれて

街中誰もがきっと軋んだ胸を抱え

無口なまま泣くのをこらえてる

作詞:浅田信一

1番のAメロで「あの日」という言葉が出てきて、「出会った日」「付き合った日」だと解釈しましたね。
季節で言うと、まさにそれはだったのではないでしょうか。

そして今の心情は凍てつく道、つまり季節で言うと
気持ちが冷え切って、もう一度あの「春」を待っている。

ここでは、「そよ風」を「春」と読み替えることができます。

つまり「そよ風を待ち焦がれて」とは、「僕」は「あの日」のようにまっすぐ愛し合えた二人に戻れることを望んでいるということでしょう。

好きではなくなったけど、好きだったときの気持ちは忘れられない。

恋愛ではよくある心情ですが、落ちた気持ちを立て直すのって、なかなか難しいですよね…。

私は、一度冷めてしまったら元には戻らないタイプです…。


涙もろい「君」に対して、「僕」は「無口なまま泣くのをこらえてる」。
いや、「君」も強がりだから、こらえてることはこらえてるのかも知れない。


でも、1番でも「僕」は「声にならぬ想い」を抱えていましたね。

泣くこともできず、思っていることを「君」伝えることもできない。
だって「君」は涙もろいから、きっと気持ちを伝えたら泣かせてしまう。

こうして複雑な気持ちを抱えて、グルグル悩んでいるのでしょう。

「街中誰もがきっと」というのは、あくまで「きっと」、つまり希望的観測なのかなと思います。

みんなそうだから、自分だけが辛い訳じゃない。

…と、思いたかった。

そう思わないと、胸のつらさを「君」のせいにしてしまいそうなのでしょう。

サビ

闇に彷徨い 戸惑う世界に

矛盾や雨の日が 悲しみを連れてくる

夜の終わりに 優しさ持ちよれば

伝わるぬくもりで 明日も戦える

陽射しが溢れてくように 優しく包まれるように

作詞:浅田信一

「闇」とはまさに今の「僕」の心の中。
どうしたいのか、続けるのか分かれるのか、お先真っ暗な状況です。

そして「矛盾」。
これは先ほど出てきた「愛しさの狭間」のことですかね。


好きか分からないけど、愛しさは残っている。

気持ちは冷めているけど、この先も一緒にいたいと思ってしまう。

という心の中の矛盾でしょう。

「雨」は一般的に、悲しさや切なさを表すのに使われるモチーフです。
対比で「陽射し」も出てきますね。

「君」の優しさ、ぬくもりでそんな冷たい雨の降る「世界」でも戦っていける。

…一見、愛に溢れたようなフレーズに思えますが、状況的に

君がいるだけで強くなれるんだZE!

という明るい心境ではないような気がします。

思うに、ここでの「戦える」というのは結局「気持ちの矛盾に悩まなくて済む」という意味になるのかな、と解釈しました。

付き合いたての頃のような優しさや温もりがあれば、まだ好きでいられるのに

ハタから見れば「別れちゃえばいいのに!」という状況だということは、おそらく「僕」も分かってるんですよね。
でも、やっぱり「君」との思い出や楽しかった記憶があるから、そう簡単に決断も下せない

だから、「付き合いたての気持ちが戻ってくれば一番ラクなのにな~」と思ってしまう気持ちなのでしょう。

最後に

超絶リアルな大人の恋愛って感じがして、胸が苦しいです…。


この歌詞は、果たしてラブソングなのか、失恋ソングなのか。

まだ関係は続いているようですし、失恋ソングではないと解釈していますが、ラブラブハッピーな歌でもないんですよね。実際の恋愛感情ってどちらかにカテゴライズできるものでもないですしね。

この歌詞の複雑さはむしろ、飾りつけしすぎず、見栄も張らず、ただただリアルな恋愛の心情を歌っている気もします。

複雑で抽象的で正直分かりやすい歌詞ではないですが、もっともっと多くの人に聴いてほしい曲だなと強く思います!良さを伝えるためにもぜひ拡散お願いします!

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